その昔「人間の意思力は使えば使うほど摩耗していく」というのうが通説でした。
いわゆる「自我消耗説」です。
ですが、最近の研究では、その説に疑問をもつ学者でてきました。
ロイバウマイスターさんが行った「自我消耗説」の実験は、自分に都合のいい情報だけを集めた、パブリッシングバイアスだったのではないかというのです。
意思力でなく、注意力が下がる
トロント大学が行ったメタ分析では、「意思力が減るのではなく、優先度が下がる」ことがわかりました。
(メタ分析……分析の分析。複数の研究を集め、いろいろな角度からそれらを統合したり比較したりする分析研究法)
この研究では、意思力は減らないことがわかりました。
その一方で、時間が経過するごとに、今行っている行為の優先度が下がることがわかりました。
例えば、勉強の場合。
数学を勉強しているとします。
この時、最初の数時間は、集中して取り組めます。
しかし、段々と集中力が切れて、いつの間にか、何も頭に入ってこなくなってしまった。
これは、意思力が下がったことが原因ではありません。
勉強の優先度が下がったことが原因です。
勉強時間が伸びるほど、「お昼ごはん」や「明日のテスト」「スマホの通知」「隣に座っている魅力的な人」のことが気になってしまい、結果、勉強に集中できなくなってしまうのです。
つまり、その行為に対する優先度が、意思力を決めるのです。
環境が大切!
では、意思力を維持し続けるにはどうすれば良いのでしょうか。
まずは、「環境を整えること」が先決です。
スマホや、漫画を近くに置かず、そのものだけを机の上に置く。
気が散ると感じる要素を、可能な限り排除する。
と言ったような誘惑のない環境を作ることです。
またこの時「意思力は伝染する」ということを知っていると便利です。
ブリュッセル大学の研究では、隣の人が集中している時、自動的にその隣の人も集中することがわかりました。
また、コロラド大学の研究でも同様の結果がわかっています。
ですので、集中している人が比較的多い環境に移動することや、自分が目標としている人が所有してるアイテムを所持する、などをしてみることで、意思力は数倍跳ね上がります。
※ブリュッセル大学の研究……被験者を隣同士に座らせ、脳トレをしてもらう。その時の集中力を調べる。
※コロラド大学の研究……「その服を着ていた子供たちは我慢できましたよ」といい、オレンジ色の服を着せ、お菓子を食べるのを我慢してもらった。この時、子供たちは、2倍も我慢できることがわかった。
「意思力」は意識で変える!
カルフォルニア大学で、面白い研究が行われました。
この研究では、102人の被験者に対し、二つの選択肢を用意しました。
「今、15ドルもらう」 「30日後に20ドルもらう」
この時、ほとんどの人が15ドルを選びました。
そして次に、別の質問をしてみました。
「今15ドルもらって30日後に0円もらう」
「今0ドルもらって30日後に20ドルもらう」
すると、後者を選ぶ確率が格段に上昇しました。
つまり、人は現在と未来を繋げて考えた時、より論理的に、より理知的に思考できるということです。
ですので、もし現状によって起こる未来の自分をより強くイメージすることができれば、意思力は格段に上がるということがわかります。
また逆に、未来の後悔を先に想像することで、現状を変えることもできます。
後悔を先に立たせるのです。
意思力を数値化する
また、意思力を「数値化」するというのも良い手段です。
意思力や集中力は、握力や脚力と違って、目に見えない力です。
目に見えないものを鍛えようとすることは非常に難しいです。
ですが、逆に目に見える成果や結果が得られれば、意外と人は簡単に努力できるものです。
そこで、まずはなるべく、自分の周りの行動を数値化してみるのはいかがでしょうか。
勉強時間の計測や、その月のToDoリスト達成率などを測る、などです。
また、この時、自分の意思力も40Lvや18Lvなど、テキトーに数値化すると良いです。
このタスクを1時間すれば、自分の意思力は1Lvアップする、などと考えるわけです。
優先度を意識!
以上のように、意思力を鍛える方法はさまざま存在します。
ですが、結局大切なのは、「優先度を上げ、それを維持する」ことです。
そしてそのために有効なのは、色々と試してみることです。
一体自分にとって何をすることが一番意思力を上げるのか。
休憩を取る、小説を読む、音楽をきく、踊る、などさまざま試してみると一番何が自分に合うのかがわかります。
今回紹介した三つの方法もその一つです。
ぜひみなさんも自分なりの意思力の上げ方を研究し、神の意思力を身につけてください。
(参考文献)