【旧約聖書㉜】民の反乱 〜 「お前は一体、何様だ!」

知識
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ストレスが止まりません

一度は、カナンの地についたにもかかわらず、再び荒野での旅。

食事は、いつもの、マナとウズラだけ。焼いたり、蒸したり、揚げたり、いろいろ試しても、結局は同じ食事でした。

そして、目の前に広がる風景は、どこまで行っても荒野・荒野・荒野……。

このような状況下でしたので、民たちの不満とストレスは、どんどん膨らんでいきました。

コラの反乱

そこで指導者の一人、レビ族のコラが、仲間を引き連れ、モーセに物申しにいきました。

「モーセとアロン。あなたたちは、自分たちを神に選ばれた人間と勘違いされているかもしれない。だが、それは間違いだ。イスラエルの民、全員が聖なる民なのだ」

「なのに、お前たちは。いったい何様のつもりだ」

これに対し、モーセは言います。

「一体何が不満なのだ? 主はあなたたちを選び、特別な民としてくれた。それ以上、何を望むと言うのだ?」

すると、彼らはこう言い返しました。

「モーセ、貴様が私たちを荒野で死なせようとしていることだよ!」

「俺たちは、カナンの地へと戻りたいのだ!」

モーセは、自分の言うことを聞いてくれたない彼らに、辟易しました。

そこで、モーセはこの悩みを神に打ち明けました。

すると、神の回答は意外なものでした。

「コラ族の元から離れなさい」

神はこれまで、直接的にトラブルを解決してきました。なのに、今回はただ「離れなさい」と言うのでした。

ただ、神の言葉ですので、モーセはそのことに従いました。

そしたら、いきなり、地響きのような鈍い音が鳴り、大きな地震が起こったのです。

そして次の瞬間。コラが立っていた地面がパックリと割れ、一族もろとも、大地の中へと飲み込まれてしまいました。

香のランニング

翌日、民たちは、「やりすぎだ」「横暴だ」「何様のつもりだ」と、モーセを非難しました。

しかし、そんな暴言にモーセは、反論することなく、ただ聞いているだけ。

そして、この事態に対して、モーセは、再び神に相談を持ちかけます。

すると、神はまたしても驚くことを言ったのです。

「民たちから、離れなさい」

モーセは、この啓示に驚き、外に出ました。

すると、民の中から、一人、また一人と、次々倒れる人が現れたのです。そして、倒れた者のそばに駆け寄ると、彼らはもう息をしていませんでした。

モーセは叫びます。

「アロン。神の逆鱗に触れてしまった。今すぐ、祭壇の火を移し、香を炊きなさい。それを持って、民の間を走るのです」

何がなんだかわからなかったアロンですが、彼は、言われた通りに民たちの間を駆け回りました。

そして、アロンが、息を荒くしながら、モーセの元に戻ってきた頃には、神の罰は終わっていました。

おわり

「香」には「祈り」という意味があります。

アロンが香を持って、民たちの間を駆け回っていたのには、「民を救ってください」という祈りの意味があったのです。

神は、このように、意外と怒りっぽく、恐ろしい性格をしています。

そして、何か悪いことをしでかした際は、即座に罰を与えるのです。

一方、罰をいくら受けても、決して神への反抗をやめない人間もまた、いい性格をしています。

この両者は、これからも、争い、恐れ、愛し合い、赦し合います。

こうやって、両者の絆はどんどんと深まっていたのです。

ボーナストリビア:サードリアリティ

神話について学習していると、「そんなバッカなぁ」「アリエねぇ〜」と感じることが、度々あります。

しかし、私たちが現代生きている、このネットネットの世界も、10年前の私たちからしたら、「アリエねぇ〜」の対象でした。

例えば、昨今では、「サードリアリティ」などという言葉が巷を騒がせています。これは、楽天株式会社の技術研究所が、掲げている未来ビジョンです。

現実の空間が第1のリアリティ。

Webの影響でコミュニティやアイデンティティ等生まれたのが、第2のリアリティ。

そして、Webがより一般的なものとなり、人々の行動や考えが、Webをまたがって存在し、Webそのものも 「見えなく」なる。それが「サード・リアリティ」です。

身近な例で言うなら、これから生まれる赤ちゃんたちです。

彼らは、これまでとは違った環境下の世界のもとに、生まれます。

たとえば、これまでは、満面の笑みで自分を見つめる親の顔を目にするのが、人生のスタートでした。

しかし今は、スマホを片手に子守りする姿を目にするようになります。

聴く音楽もまた、母が自分の手でヨシヨシしてくれる子守唄ではなく、ニコニコ動画で再生回数の多い「子供が泣き止む歌」を耳にすることになります。

生まれた瞬間から、ネットと現実とが、あべこべの世界に生まれる赤ちゃんたちにとって、自分の母親よりも、初音ミクの顔と声の方が、一番心地いと感じるようになるのです。

神を信じる人間も、仮想世界を生きる人間も。

結局は、同じような思考回路のもとで、成り立っているのです。

(参考)

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