【植物学】イネを食べるために、胃を4つにした動物たち —— 彼らは体を大きくするしかなかった……

スポンサーリンク
スポンサーリンク

イネの葉は食べられたものではない!

私たちが普段、主食として食べている「お米」は、イネの「種」の部分です。

もちろん、イネにも葉っぱがあるわけですが。残念なことにイネの葉っぱは食べられません。

これは以前の記事でも書きました通り、「ケイ素」という硬い物質が使われていることが原因です。

ただ、それだけなら、火で炙るなり、茹でるなり、切るなりすれば、食べられそうです。確かにもちろん、そうすれば「食べる」ことはできます。しかし、イネの葉は、そんなに苦労してまで食べる価値がないのです。

というのも、「栄養がない」からです。イネ科植物の葉自体には、まったく栄養分がないのです。さらに、「消化しにくい」という、ダブルパンチがあります。

光合成しているのに、不味い理由

ただ、イネ科の植物も「植物」ですので、光合成はします。そして光合成をするということは、栄養分、デンプンを作っているはずです。

では、なぜ「デンプン」という栄養素があるはずの葉っぱに、栄養分がないのでしょうか。

それは、イネ科植物の栄養分の蓄え方法にあります。

イネ科の植物は、作り出した栄養分を地面スレスレのところにある茎に蓄積させます。そうすることで、葉っぱに残す栄養を最小限にして、エサとしての魅力を減少させているのです。

どうしても食べたいから、胃を4つにした!

ただ、どんなに栄養素がなかったとしても、草食動物は、食べなきゃ生きていけません。

そして、動物はやがてイネ科の植物をエサにする身体へと、進化を遂げていったのです。

その方法が「胃を4つにする」という方法です。

以下、1番目から4番目の胃の役割を簡単に記します。

①胃:貯蔵。中で微生物に草を分解してもらう。これは、人間の発酵に似ている(大豆→味噌、納豆。米→日本酒などと同じ)

②胃:反芻(はんすう)。消化物を一度口に戻し、咀嚼し直す。牛が食後、寝ながらモグモグしているアレ。

③胃:調節。食べ物を④に送ったり、①②に戻したりする。

④胃:消化と吸収。人間の胃と同じ役割。

おわり

ウシ、ヤギ、ヒツジ、シカ、キリン。これらの動物が、上記のような進化を遂げました。

また、ウサギやウマには胃が一つしかありません。しかし、盲腸を発達させることで、「①胃」と同様の働きをさせています。

草食動物は、とても不味く、栄養価のない葉っぱを食べるために、こんなにも頑張っているのです。

「野菜嫌い」の子供には、ぜひ、この草食動物のお話をしてあげてはどうでしょうか! きっと頑張って食べてくれるはずです!

ボーナストリビア:ベジタリアンのくせして、でかい草食動物

ウシ、ウマ、キリン。ほとんど栄養がないのに草しか食べていない彼らが、なぜあんなにも大きいのでしょうか?

ふつう「栄養があるものをたくさん食べている生物が、大きくなる」というのが、常識なのではないでしょうか?

これは、スペックの問題です。昔のデスクトップやラップトップが、現代では驚くほど薄くなりました。

これと同じように、イネを消化するにあたって、科学技術も機械も持たなかった動物たちは、畢竟、大量に食べて、それを蓄積するための身体構造に変えるしか、道がなかったのです。そのために、4つの胃を持ったり、ハイスペックな盲腸を持ったりと、内臓を進化させた。

だから、彼らの体はあそこまで大きいのです!

(出典)

眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話
大ヒット「眠れなくなるほど面白い」図解シリーズに、【植物学】が登場。 色仕掛け、数学の応用など、生き残りをかけた植物のたくみな戦略を徹底解説。 図とイラストで、ひとめで植物の生態としくみがわかります。 読めば、「ふだん見かけるあの植物に、そんな秘密が!?」と驚くはず。 「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」 「なぜ夏の
面白くて眠れなくなる植物学
本書は、ロングセラー『身近な雑草の愉快な生きかた』の著者による、読みだしたらとまらない、すごい植物のはなし。 植物は当たり前のように私たちの身の周りにありますが、けっして何気なく生えているわけではありません。植物の生態は、私たちが思っているよりもはるかに不思議であり、謎に満ちています。本書は、そんな植物の魅力を解き明か
面白くて眠れなくなる植物学 (PHP文庫)
植物は当たり前のように私たちの身の周りにありますが、けっして何気なく生えているわけではありません。 植物の生態は、私たちが思っているよりもはるかに不思議で、謎に満ちています。 本書は、そんな植物のミステリーに迫ろうという一冊。 ◎花占いの必勝法 ◎ちょうちょうはなぜ、菜の葉にとまるのか? ◎水戸黄門の印籠はフタバアオイ
知識
スポンサーリンク
AichiLog