本日は、世界を支える大樹「ユグドラシル」について扱います。
木の上にある世界
世界は、巨大なセイヨウトネリコの木の上にありました。
その名前は、「ユグドラシル」。「ユグの馬」を意味する言葉で、「ユグ」は「オーディン」の別名です。
構造は、大きく三層構造で、上層・中層・下層にそれぞれ3つの世界があります。
上層:神と妖精の世界
まず、上層にある3つの世界を紹介します。
上層には主に、神と妖精の二つの種族が暮らしています。
一つ目の世界は、神の中でも、アース神族が住む「アスガルド」。
もう一つの世界は、ヴァン神族が住む「ヴァナヘイム」です。
そして、最後、妖精が住む世界が「アレフガルド」です。
ここで、妖精について少し補足をします。
妖精とは、つまりエルフのことです。エルフは、神より一つ、格下の存在です。
では、なぜ神が住む最上層に、神ではない妖精がいるのでしょうか?
理由は簡単で、支配者の通勤が楽だからです。
妖精たちを束ねているのは、豊穣の神「フレイ」です。フレイは当然、神ですから、神々の国に住んでいます。
ですので、両者の国を行ったり来たりする上で、妖精の国は、同じ階層にある方が便利。というわけです。
中層:巨人と人間の世界
続いて、中層にある3つの世界についてです。
中層に住むのは主に、巨人と人間です。
もともと、ユミルをはじめとする「霜の巨人」たちは、神話において、立派な神として扱われていました。
しかし、オーディンをはじめとする神々と敵対してしまった巨人たちは、神々と同じ層ではなく、この中層に住むことになりました。
そんな巨人たちのいる世界が「ヨトゥンヘイム」です。
また、巨人とは別に、神々によって作られた「人間」もまた、この中層に住んでいました。世界の名は「ミッドガルド」です。
ミッドガルドは、海に囲まれており、そこには「ヨルムンガンド」と呼ばれる大蛇が全体を取り囲むように、とぐろを巻いていました。
そして最後、もう一つの世界に生息しているのは、スヴァルトアールヴ、通称「ドワーフ」です。世界の名前は、「スヴァルトアールヴヘイム」。
以上、中層には、この3つの種族が存在します。
また、ちなみに、上層と中層は、虹の橋「ビフロスト」によって、繋がっています。ここには、ヘイムダルという神様がおり、巨人が攻め込んでこないよう見張りをしています。
下層:
最後に、下層についてです。
下層は「ニヴルヘイム」「ヘルヘイム」「ムスペルヘイム」の3つの世界が存在します。
灼熱の世界「ムスペルヘイム」と極寒の世界「ニヴルヘイム」については、前回の記事で紹介した通りで、オーディンたちが生まれる以前から存在していた世界です。
そして、「ヘルヘイム」は別名「死者の国」。この世界は、ロキの娘、ヘルがその管理を任されました。
3つの泉
ユグドラシルには、これら9つの世界の他に、3つの泉があります。
最後に、その3つを紹介して、終わりにします。
一つ目の泉は、知恵の泉「ミーミル」です。
この泉は、ちょうど、ユグドラシルの根っこが、巨人たちの世界「ヨトゥンヘイム」に伸びているところにあります。この泉は、巨人ミーミルが管理しており、オーディンがこの知恵を得る代償に片目を差し出した話が有名です。
二つ目の泉は、浄化と生命力をもつ「ウルズ」の泉です。
この泉は、アスガルドの方角にある根っこのところにあります。管理しているのは、ノルンの三姉妹で、おもに「ウルズ」が管理していました。
※3人姉妹で,名をそれぞれウルズ (過去) ,ベルザンディ (現在) ,スクルド (未来)という。 彼女たちは、ユグドラシルに絶えず水をやり、世界樹を枯らさないようにしていました。
そして最後の泉は、「フヴェルゲルミル」です。この泉は、「ニーズヘッグ(※)」のすみかで、極寒の国「ニヴルヘイム」の凍った川の源泉にもなっています。
※「おわり」を参照
おわり
以上、ユグドラシルには、9つの世界と、3つの泉があります。
そして、そのすべてがラグナロクによって壊れ、現代の私たちの世界が築かれていったわけですが。
そんな中、ユグドラシルの根である「ニーズヘッグ(怪蛇)」は、生き残りました。ラグナロクの際に、空に舞い上がることで、生き延びたのだとか。
蛇を神や怪異、龍などと結びつける文化は、どこか日本に似たところがありますね。
ボーナストリビア:下層に境界はない!
下層に存在する世界は、他の層にある世界と違い、境界がありません。
というのも、「ニヴルヘイム」に行こうと、「ムスペルヘイム」に行こうと、どちらも地獄のような熱さや、地獄のような寒さが待っているからです。
その熱さや寒さは、その土地で生まれた者以外では、生息することができない環境となっています。
有名なのは、「ニヴルヘイム」で生まれた、炎の巨人「スルト」です。
スルトは、最終戦争「ラグナロク」でアスガルドにまで攻め込みました。そして、最後、手にした炎の剣をユグドラシルに投げつけ、世界をそのまま滅ぼしてしまったのです。


