『ブルーピリオド』シリーズ、第六弾です。
藝大受験の2次試験、いよいよ開幕です。
さまざまなハプニングが起こる中、主人公・矢口八虎はどう振る舞うのか。
とても楽しい一冊でした。
6巻の名シーン
絵を描く前は知らなかった
——矢口八虎
絵には勉強することが多いってこと
でもそれだけじゃダメってこと
こんなにも
体力がいるってこと
始めるのが遅いのなんか
——矢口八虎
慣れてんだよ…‼︎
あと二日だけだ
——高橋世田介
それが終わったら…
俺は家でポケモンやって寝る…
だから今日だけはムリした方がいいよ
——ただでさえ他の人より遅れてんのに…
じゃあ有利じゃん
周りの人はもう書き始めてるんでしょ?
——大橋先生
なら人の答えがわかるわね
自分にとっての「ありのまま」も
——矢口八虎
みんなにとっての「ありのまま」だと
思い込んでたんだ
俺にとって「裸」は情けないもの
——矢口八虎
服を着るのは「裸」を隠そうとする
後ろめたい行為で
この絵は 俺の目を通して見た
俺の世界なんだ
ありのままの俺って
——矢口八虎
ほんと笑えるほど自信がないな…
自信なんかないよ
事実だから
俺が絵が上手いのは矢口さんは
——高橋世田介
ご飯食べたり うんこしたりするのを
褒められら
ソレに自信持てるの?
父さんの言うことももっとも
堂々とするだけで説得力でる
うじうじした作品って弱いんだよなー
でも自信を持てないことを恥ずかしいって思うくらいなら
——矢口八虎
ソレを受け入れて戦略練る方が
俺に合ってる
…お母さんは絵がどれくらい大変かわからないけど
——矢口八虎の母
ずっとずっと頑張ってきて
それで今日がきっと踏ん張りどころで
だから余計なお世話かもしれないけど
楽しんできてね!
八虎!
でもさ
——矢口八虎
自信のない俺だから
ここまで描けるようになったんだって思いたいな…!
俺は世田介くんにはなれないわ
隆二にも森先輩にも結局俺は
——矢口八虎
自信のない俺にしかなれないんだ
気づいてくれた…!
俺が一番考えてたところ…!本当にヤバイ
——矢口八虎
ホントにうれしい
ヤバイ
ヤバイ
うれしい…ッ!
ずっと
俺が凡人だから
自分に自信がないから
努力して戦略練ってやんなきゃって思ってた
——矢口八虎
でも
コンプレックスの裏返しじゃなくって
”努力と戦略”は俺の武器だと思ってもいいの?
俺
——矢口八虎
ずっと自信がなかったよ
いや今でもね
俺だって自分の絵がこの世の誰より優れているなんて思ってない
俺より上手い人なんかいっくらだっている
でも
でもさ
この世界で誰より
俺は
俺の絵に
期待している
はは
——矢口八虎
俺って結構おしゃべりじゃん
そっか
自信はないけど
同時にとっても傲慢だった
戦略的にやれるって思ってる
でも絵を描く前はそんなことすら気づけなかった
”情けない裸”
ですらなかったんだ
絵を描くまで
俺 ずっと”透明”だった
後悔はないですよ
——矢口八虎
反省は死ぬほどあるけど
——謙遜ですか?
いやマジですね
俺
一日目に体調崩して
ほとんど描けなかったんですよ
それだけで他の人より不利だし
でも
それより
スケッチブック
もうちょっと慎重にやればよかったんじゃなかったか とか
絵の方もああいう攻め方もあったかもなとか
でもまあしょうがないですよね
本番で
実力出しきれないところまでが
実力なんで
作品は
——大葉先生
諦めたら
そこで完成よ
おわり
この巻(6巻)は、なんだか受験時代に戻ったような感覚でした。
合格した人も
不合格だった人も
それぞれにいろいろなドラマがあって……
ロシアの詩人のプーシキンが書いた中編歴史小説『大尉の娘』でこんなことが書かれています。
失敗には達人というものはいない。人は誰でも失敗の前では凡人だ。
どんな分野のプロでも、失敗においてはアマです。
この巻で、失敗した人が、今後どのような人生を歩んでいくのか、とても楽しみです。