今回は『チ。——地球の運動について——』という漫画についての記事です。
この漫画は、『「地動説」と「天動説」』がテーマの漫画です。
拷問のシーンなど、少しグロい描写もありますが、一応、「ビッグコミックスピリッツ」という小学館から出版されています。
本書のストーリーは、「地動説を証明するために、命をかける人たちのお話」です。
宗教や哲学、天文学などが学べる作品となっております。
一巻の名シーン
硬貨を捧げれば、パンを得られる。
税を捧げれば、権利を得られる。
労働を捧げれば、報酬を得られる。
なら一体何を捧げれば、この世の全てを知れる——?
知ってますか? 爪が剥がれると何が一番困るか。
答えは「激痛」です。
——ノヴァク
結局そういうシンプルなのが一番困るらしいですよ。
——そんな直感に命を捧げるのは、愚かだ。
——フベルト
正論だな。だが反対だ。
私は命を張る場面でこそ直感を信じる。
——信じて間違ったらどうするんですか?
構わない。
不正解は無意味を意味しない
そんなこと当たり前だ…
——ラファ
でも、
この当たり前を延長したら?
人は皆 現世は醜く貪欲で汚れていて、天国は清く美しいと言う。
だが私はそんなの認めない。
神が作ったこの世界は、きっと何より美しい。
それを知るのに盲信も金銭も地位もいらない。
知性だけ備えて、小さな頭蓋骨の中でかみの異形を理解してみせる。故に私は聖書ではなく自然を読むのだ。
——フベルト
——そ、そんな人生…怖くはないのですか?
——フベルト
怖い。
だが怖くない人生などその本質を欠く。
申し訳ないが、この世はバカばっかりだ。
——ラファ
でも気づいたらその先頭に、僕が立っていた。
本当の僕は、”清廉”でも”聡明”でも”謙虚”でも”有力”でもなく、
”横柄”で”傲慢”で、”軽率”で”無力”で——
そして今から、
地球を動かす。
宣言しても詰んでない。
——ラファ
資料を焼いても詰んでない。
前科がついても詰んでない。
天文が禁止されても詰んでない。
まだ…詰んでない。
何故僕は、こんな事になったんだ?
——ラファ
……地動説に出会わなければ、こんなところにいる筈なかったのに。
何故僕は、こんな選択を……
地動説なんて、なんの意味も……
でも、でも何故だ。
今は、あの頃よりハッキリと、宇宙がよく見える。
——死の先に恐ろしい運命が待ってるぞ
死の先なんか誰も知りませんよ。
ソクラテス曰く、
「誰も死を味わってないのに、誰もが最大の悪であるかのように決めつける」
エピクロス曰く、
「我々のあるところに死はない。死のあるところに我々はいない」
セネカ曰く、
「生は適切に活用すれば十分に長い」僕はその全てに賛成です
——ラファ
——そんな言葉が何になる!
感動できる。
——ラファ
フルベルトさんは死んで消えた。
でもあの人のくれた感動は今も消えない。
多分感動は寿命の長さより大切なものだと思う。
——……し、正気じゃない。訳もわからん物に熱中して命すら投げる。そんな状態を”狂気”と言うとは思わないのか⁉︎
確かに。でもそんなのを、”愛”とも言えそうです。
——ラファ
感想
我々は色々なことを妬んだり、恨んだり、羨んだりします。
我々は、自分の持っているものよりも、自分の持っていないものばかりに目がいってしまうのです。
ただ人生というものは、「灯台下暗し」というのが常です。
『感動』
これも人生において忘れがち、かつ「灯台の下」に置きがちな物だと思います。
「魂は死なない」といった議論はさておくとして、「人は死ぬ」という点では皆共通した見解を持っている筈です。
でも、その人が残した感動は消えない。
「感動は寿命の長さより大切」という本書の言葉に心が打たれました。
たとえその人が死んでも、その人が残した「感動」は、現世の人たちの「心を動かしてくれる」。
人の価値は、人に与えた感動の量によるのかもしれない。