今回は、前回の「泳ぐラット」の実験に加え、もう一つの実験を紹介します。
「犬の後天的無力感」に関する研究です。
これは、1965年、コーネル大学のマーティン・セリグマンによって行われた研究です。
犬が大好きな方には、少し非道に思われるかもしれませんが、ぜひ最後までお付い合いください。
「頑張る犬」と「諦める犬」
まず、大きさがビーグルやコーギーくらいの雑種犬を、それぞれ一匹ずつ箱に入れ、体を固定します。
それから、それぞれの箱に、無害だが、不快さを与える電気ショックを与えます。
一方の箱は、ショックを止める仕掛けが用意されていますが、もう一方の箱には、自力でショックを止めることが不可能だ仕組みになっています。
それぞれの箱に与えられるショック量は同じです。
しかし、実験結果は、違いました。
ショックを止められる方の箱に入れられた犬は、多少苛立ちを見せたが、すぐにショックに身構え、痛みを回避するための行動を見せました。
一方、ショックを止められない方の箱に入れられた犬は、哀れっぽく鼻を鳴らし、何もしようとしませんでした。そして、この兆候は、実験が終了しても続きました。
実験の第二段階
そこで今度は、それぞれの犬を、違う箱に入れてみました。
その箱は、前回と同様に、電気ショックが流れるような設計になっていましたが、高さが先程の箱よりも低く設定されており、体も固定されていません。
実験が開始すると、先程、電気ショックを自分でコントロールすることができた犬は、すぐに箱を飛び越え、ショックのある箱から抜け出しました。
しかし、一方、先程、何もすることができないことを学んだ犬は、電気ショックが始まるや否や、その場にただじっと座り、ただ痛みを耐え続けました。
他の犬が壁を飛び越えている姿を見せても、人為的にショックを回避することを教えられても、犬たちはただ苦痛に耐えるだけでした。
箱の向こう側に見える苦痛なき世界は、彼らの目に入ることがなかったのです。
まとめ
今回の結論はこうです。
「行動を起こす」というのは
自分自身の力で
自分の置かれた環境を変えられると
「認識」することである。
前回紹介した「ラットの実験」では、ラットたちは、必死の努力によって得た自由を、前に味わったから、必死に泳ぎ続けました。
逆に、今回の実験のように、過去に努力が報われないと経験をした動物は、行動を起こすことをやめてしまいます。
つまり、我々、動物にとって、最も重要なことは、実際に状況をコントロールできるかどうかではありません。コントロールできるという認識こそが最も重要なのです。