その昔、ジョージア州アトランタ市に、ジョン・ペンバートンという薬剤師がいました。
彼はもともと、南北戦争で、アメリカ合衆国の薬剤師でした。
戦争から帰えると、彼は、調合や実験を繰り返し、何十種類もの治療薬を考え出します。
その一つが「コカ・コーラ」です。
コカ・コーラは塞翁が馬!
むかしむかし、A・マリアーニという化学者がいました。
彼は、コカの抽出物とワインを混ぜ、「ヴァン・マリアーニ」という頭痛薬を作り、特許も取りました。
この薬には、媚薬の効果や、飲むとドキドキし、歌いたくなるといった効用がありました。そこで、「声をよくする薬」という謳い文句で販売されていました。
そんな当時大流行していた、このコカを使って一儲けしようと考えた人物がいます。
それが、ジョン・ペンバートンです。
彼は「ヴァン・マリアーニ」に、さらにカフェインを混ぜ合わせ「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」として販売したのです。
これが大評判で、一週間で1000本近くも売れる大ヒット商品になりました。
ところが19世紀後半、全米では禁酒運動が高まります。
当然、ワインを含んだこの「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」も攻撃対象です。
そこで彼はその頭痛薬を倉庫に保管していたわけですが……
そんなある日、仲間内から「『フレンチ・ワイン・アンド・コカ』を水で希釈すると美味しい」という話を聞きます。
そこでジョンは、さらに、コカの葉とコーラの実の成分、それから風味剤と炭酸水を加え、元祖『コカ・コーラ』を作り出しました。
『コカ・コーラ』は爆発的な人気を博し、「世界を救う究極の薬品」とまで謳われました。
その後、ジョンは、『コカ・コーラ』の権利をE・G・キャンドラーに売却し、現在のコカ・コーラ社が、アトランタ市に建てらました。
鉄の心、ジョン
ジョンは最初、『コカ・コーラ』を薬として販売します。
「女性の神経衰弱や胃腸、腎臓の痛みに悩むデスクワーク従事者、神経強壮薬や刺激剤を必要とする者」等に効果があり、他にも、「食欲不振や頭痛、体調不良や二日酔い、神経痛や男性機能回復などなど……」という、もう思いつく限り、ありとあらゆる効用を広告に載せ販売しました。
「薬がすべてを解決する」そういった時代でも、有る事無い事を、とにかく書きまくるには、強い鋼の心が必要なはずです。
彼をそうたらしめたのは、なんだったのでしょうか。
一つは、「寿命」です。
南北戦争での傷が原因で、彼は、その痛みを耐えるためにモルヒネを打ち続けていました。そうしていつしか、モルヒネ中毒者になり、寿命は数えるほどしか、なくなってしまいます。
事実、彼は『コカ・コーラ』発表後、2年後にこの世を去っています。
このような状況から、「『コカ・コーラ』は世界を救う「万能薬」だ」と言い切ったのかもしれません。
そしてもう一つが、単純に「信じていたから」です。
「『コカ・コーラ』はそんじょそこいらの偽薬ではない。本当に素晴らしい薬だ!」と心の底から、本気で信じていたのです。
コーラがあれば頭痛は治る。
コーラがあれば悩みは吹き飛ぶ。
コーラがあれば万事OK!
そう本気で信じていたのが彼を、彼たらしめたのです。
自分を信じろ!
ジョン・ペンバートンは、ぼくたちに2つのことを教えてくれました。
一つは、とりあえず試すという精神です。
「挑戦」というと、ぼくたちは二の足を踏みそうになります。
しかし、「実験」というと、なんだか「挑戦」への扉に一歩近づいた気がします。
ジョンは、化学者だったんだから、いろいろな薬品を試したり、調合したりするのは当然だと思われるかもしれません。
ですが、そういった実験精神は、ぼくたちも真似できるはずです。
『コカ・コーラ』ができたのは、それよりも前に「ヴァン・マリアーニ」などの別の薬ががあったり、禁酒法があったりしたからです。
『コカ・コーラ』は全て計画通りにできたものではありません。
挑戦し、実験し、検証し続けた結果、偶然できた商品だったのです。
もう一つは、「自分を信じろ」ということです。
ジョンは、『コカ・コーラ』以外にも「女酋長の白髪染め剤」「金梅草の咳止めシロップ」「フランスワイン色のコカの木」「人生を三倍楽しむための丸薬」といった、いかにも怪しげな名前の薬を多数販売していました。
もちろん、彼はすべてに、名前の通りの効用があるのだと信じていたのです。
いろいろな挑戦をし続け、自分が信じ、自分が思った道を歩み続けたジョン・ペンバートン。
そんな彼だからこそ、「コカ・コーラ」という商品を生み出せたのです。
人生は何があるかわかりません。
コインは、投げ続けた者にだけ、多くの表を得ることができます。
自分を信じ、一歩前へ。
ジョン・ペンバートンは、そんな勇気をぼくたちに与えてくれました。
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豆知識
●コカ・コーラの赤色を見ると、サンタクロースを思い出します。事実、サンタクロースの赤が、コーラの赤です。コカ・コーラ社はこの赤色の特許をとっているのだとか。
●コカ・コーラのあのかっこいいロゴは、デザイナーさんが考えたものではなく、売り上げ記録に書いてあった文字からきたそうです。
●コカ・コーラは中国語で「可口可乐」と書きます。「乐」は繁体字で「楽」です。つまり、「口に入れることが可能で、楽しむことが可能」な飲み物。それがコーラです。
●ぼくは子供の頃、よく花火や車の排気ガスなどを吸うと、すぐに喘息が出てしまう体質でした。ただ、そんな時、顔を上に向けた状態で、一気にコーラをがぶ飲みすると、症状が治ることがよくありました。コーラの強炭酸が、喉にこう、グワっとくるわけですね。皆さんも、喉が痛くなったり、美声を出したくなったら、コーラを飲んでみるのもいいかもしれません。