最近読んだ中で、かなり面白い一冊でした。
著者は苫米地英人(とまべち・ひでと)さんです。
1959年、東京生まれ。
認知科学者(機能脳科学、計算言語学、認知心理学、分析哲学)。
計算機科学者(計算機科学、離散数理、人工知能)。
カーネギーメロン大学博士(Ph.D.)、同CyLab兼任フェロー、株式会社ドクター苫米地ワークス代表、コグニティブリサーチラボ株式会社CEO、角川春樹事務所顧問、中国南開大学客座教授、全日本気功師会副会長、米国公益法人The Better World Foundation日本代表、米国教育機関TPIジャパン日本代表、天台宗ハワイ別院国際部長、財団法人日本催眠術協会代表理事。
本書からの抜粋です。
まるで数人の人生を一人に集約したかのように、たくさんの経歴をお持ちの方です。
本書の構成は以下のようになっています。
第1章
本当の「金持ち」、ウソの「金持ち」
第2章
本当の「金持ち脳」を育てる日常的方法
第3章
あなたの中の「貧乏脳」とは何か
第4章
「貧乏脳」から逃れる日常的方法
第5章
「貧乏脳」から「金持ち脳」へ乗り換える仕事の選び方
第3章から第5章がタイトルになっている通り、「金持ち脳」について解説です。
しかし、僕が最も面白いと思ったのはむしろ最初の第1章と第2章の部分でした。
本日は、そこを紹介していこうと思います。
民間人は公務員の奴隷
「税金の恩恵を受けているのは、公務員である」と筆者は述べています。
国家予算は大きく2つに分類できます。「一般会計」と「特別会計」です。
そして消費税は「一般会計」に含まれ、「一般会計」のほとんどのは、公務員の給料が占めるのです。
少し横道にそれますが、本書では「企業が潰れる理由」についても書かれています。
その理由は、「中間管理職の存在」です。
中間管理職はその名の通り、仕事を管理する仕事で、生産的なことは何もしません。
そのため、中間管理職が増えても、企業にとってはメリットがありません。
ギリシャを例にとります。
ギリシャは、公務員の数が異常に多く、過剰な優遇政策を行った国です。
そんなギリシャがどのように国家を回していたのか。
それは「奴隷制度」と「債券」です。
ギリシャは奴隷を使うことと、債券を海外に買わせること。
この2つで国家を支えていました。
一方、日本はどうなのか。
日本は、「国民が債務を支える」という異様な国、だと筆者は述べます。
そのため、デフォルト(債務不履行)も起こらない。
そして、国債の大半が公務員の給料となっています。
確かに、道路や橋といった、公共的なことにも使われてはいますが、それは建設業者が行った仕事に対する正当な対価であって当然のことです。
確かに、日本には奴隷制度がありません。
ですが、目に見えない形で、奴隷になっているのかもしれません。
「復興」と洗脳
「復興財源」というものがあります。
これは「復興」という、優しい言葉を使った国家の洗脳であると、筆者は言います。
本来「復興財源」は、その会計年度内で消費することはできません。インフラなどの長期間利用されるものに対する投資を行います。
また、国のお金は個人のために使えないというのも大きな特徴です。
「復興財源」という名前からして、震災の被害にあった人の家を復興するのに、使われているというイメージを持つかもしれません。
ですが、それはできない。
もし国のお金で個人の家を建ててしまえば、家は国の所有物になってしまうからです。
以上のような点から、
「『復興財源』という名目で、増税が行われるのはおかしく、その会計年度内に消費される一般会計から賄われるべきだ。」
「それが無理なら、震災被害者に長期間、低金利で貸出しを行うべきだ」と筆者は述べます
しかし、BIS規制により、長期間低金利で金貸しをすることはできない。
だから、「BIS規制をまず外すべきだ」と筆者は主張します。
※BIS規制……各銀行は自己資本比率を8%に維持しなければならない
つまり、返ってくる可能性の低い人には金を貸せないということ。
「3S」と洗脳
昨今、サステナビリティ(持続可能な発展)がよく叫ばれていますが、日本人はもともとサステイナブルな人間でした。
物は長期間使うのが当たり前。
一つの部屋は、昼間はリビングになり、夜は寝室になる。
このように、日本人は、環境を壊さず、限りある資源を使い切らないように暮らすようにしていました。
しかし、GHQに占領されて、日本に「消費文化」が入ってきました。
消費文化の始まりは、1933年のルーズベルト大統領による、ニューディール政策に端を発します。
そこで登場するのが、「3S政策」です。
大衆の目を、政治から、「スポーツ・セックス・スクリーン」へ向けさせるためのプロパガンダです。
そしてこの三つの中で特に、スクリーン(テレビ)が絶大な影響を与えた。人は知覚的情報は頭に入りやすく、それによって、消費を促していった。
またオリンピックも、この政策の一環です。
オリンピックは本来、世界平和のためでした。しかし、その実は、経済効果にこそ、重きが置かれていました。
石原東京都知事もそう明言しています。
消費経済が活性化するほど、政府は税収をとりやすくなったのです。
まさに洗脳です。
最後に
本書にはこの他にも、面白い話がたくさん書かれています。
「『環境に優しい車』のハイブリッド車ほど、環境に悪い車はない」
「水素自動車が最もエネルギー効率が悪い」
「官僚になろうとする人のレベルが下がっている」
「電気代を無料にすべきだ」
「円以外の使用を禁じる『円建て本位制』にせよ」
「ユダヤの母親のお話(ジューイッシュ・マザー)」
などなどです。
そして本書の1番のテーマである金持ちについては以下のように結論付けています。
『「金持ち」とは、「必要なものを買うのに困らない人」のことをいう』
我々は金持ちの定義を金額で判断しがちです。
特に、日本では年収何千万、資産何億といった謳い文句でよく雑誌や新聞などで「金持ち」について書かれています。
ですが、彼らは「お金持ち」ではないと著者は語ります。
世界から見たら日本の「お金持ち」は、貧乏人同然、せいぜいイギリスの中流階級程度であると述べています。
中国の約3000万人は、日本の金持ちを超えていると言います。
「それは人口が多いからだ」と言うかもしれませんが、
中国の人口を13億人と仮定したとき、4分の1が日本人のお金持ちを超えていると言うことです。
「お金持ち」など、他人と比べた評価でしかなく、上には上がいます。
そもそも、「お金持ち」などという言葉を使うのは、日本だけだそうです。
我々はスクリーンによってかなり洗脳を受けているのかもしれません。
「金持ちでなければならない」
「金持ちでないと恥ずかしい」
「金持ちは良いものだ」「貧乏人はみっともない」
このような洗脳をあなたは受けていないと言い切れますか?
だから筆者は最後にこう言います。
テレビを捨てなさい。