マイケル・A・オズボーン准教授(オックスフォード大学)らは、2013年に発表した『雇用の未来』という論文で、「 10〜 20 年以内に(アメリカの) 労働人口の約 47%が機械に代替されるリスクがある」と述べています。
「創造的な仕事は人間にしかできない」「コミュニケーションの必要な仕事はなくならない」といったさまざまな意見があると思います。
しかし、『ユーチューバーが消滅する未来2028年の世界を見抜く』では、20年、30年というスパンで考えれば、人間にはどんな仕事も残されていない、と述べています。
囲碁や将棋と言ったボードゲームで勝てなくなることはもちろん、料理や掃除をするAI、アイドルやアーティスト、お笑いと言った分野でも、人工知能が台頭するというのです。
そして、YouTuberもその例外ではありません。
小学生の将来の夢
日本FP協会が実施した小学生の「2017年度 『将来なりたい職業』ランキングトップ 10」によれば、男子児童の6位は「ユーチューバー」(2016年度は 14位)。
ソニー生命保険の「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」では、「男子中学生が将来なりたい職業」の3位が「ユーチューバーなどの動画投稿者」。
ユーチューバは今や、子供たちが警察官やサッカー選手と同等に憧れる、立派な職業となりました。
しかし、10年後にはYouTuberが消滅する可能性が非常に高いです。
そう考える理由は3つあります。
グローバルユーチューバーとの戦い
2016年に大ヒットした「PPAP♪」で知られるピコ太郎。
きっかけは、ジャスティン・ビーバーがピコ太郎をリツートしたことや、海外のニュースで取り上げられたことでした。
日本語がわからない世界中の人が、彼の踊りと歌に夢中になったのです。
他にも「赤ちゃんのVlog」や「動物の可愛い映像」「おもしろ衝撃映像」などもコンテンツとして大人気です。
これらの動画に共通しているのが、言語がわからないくても、楽しめるとうことです。
ですが、少し内容が複雑になると、言語がわからないと伝わらず、視聴者は限られる。
これまで、そこにニーズがあったわけです。
ですが、もし、この言語の壁がなくなったらどうでしょう。
囲碁や将棋、チェスといったボードゲーム同様、言語も、データが蓄積されれば、機械翻訳や音声認識の精度はどんどん高まっていきます。
10年後には、ほとんどの人が外国語を勉強する必要がなくなっているはずです。
ネイティブスピーカーの数で見れば、上位の中国語や英語、ヒンディー語に比べ、日本は9位という結果です。
しかし、アニメや漫画といった文化が相まって、日本語の機械翻訳もそう遠くないうちに訪れるはずです。
すると、ユーチューバーは、海外のユーチューバーたちとの競争になります。
その時、生き残れるユーチューバーは果たしてどれくらいいるのでしょうか。
「バーチャルユーチューバー」から「 A I ユーチューバー」へ
最近は、バーチャルユーチューバーが増えてきました。
顔だけをバーチャルな顔で加工している人や、体から声まで全てバーチャルで加工している人までいます。
美少女がしゃべっているように見える映像が実は、50代のおじさんだったりするのです。
このように、動画配信は別に「人間」がやらなくてもいい、という考え方が徐々に浸透してきています。
ではもし、AIがユーチューバーとなったらどうでしょうか。
24時間365日、ひたすら動画投稿をし続けるAIに、我々は勝てるのでしょうか。
日本のYouTuberの主流は有名人に!
そして、ユーチューバーが破滅する理由のもう一つは、「知名度」です。
YouTubeは「誰でも行え、実力さえあれば無名の人でもなりあげれる」と信じられてきました。
しかし、ユーチューバーとして知名度の上がった人が次々に不祥事を起こしていくうちに、私たちは自然と無名のユーチューバーに対し、嫌なイメージを持つようになります。
そうなった時、YouTubeは無名の人が成り上がるのが非常に難しくなります。
すると、YouTubeの市場で生き残れるのは、二つのタイプに分かれます。
一つは「世襲タイプ」です。
生まれた時点で有名なタイプの人です。
アイドルや芸人の娘や息子といった人たちは、生まれる前から、新聞にのり、ニュースで取り上げられます。
そんな人たちが、情報を拡散する上で、非常にアドバンテージがあることは瞭然です。
もう一つは「成り上がりタイプ」です。
これは、何もない人が一から動画投稿で成り上がるという意味ではありません。
何かの分野で成り上がり、第一人者になった人のことで、メンタリストの専門家や、オリンピック金メダリスト、芥川賞作家などです。
つまり、これからは、ポッとでの人物が、大ヒットを起こすのは非常に難しく、知名度や存在感を示せないYouTubeは生き残れないということです。
一体どうすればいいのだ!
人類はたぶん人工知能に支配されます。
しかし、それは武力によってではありません。
彼らの武器は、「面白さ」だったり、「可愛いらしさ」だったり、「毎日100回更新するマメさ」だったりします。
人類には不可能な安定した魅力や進撃速度で、我々の日常生活における興味関心を占有してしまうのです。
では、私たちはどうすればいいのでしょうか。
『ユーチューバーが消滅する未来』という本では、「うまくやっている人の役立つ」という方法が紹介されています。
人工知能によって仕事がなくなる、それによって、生きていくことができなくなる。
そうならないためには、大樹の陰に寄ることが先決なのです。
ゴールドラッシュの時に一山を当てたのは、金を掘った人ではなく、金を掘る人たちにズボンやスコップを売りつけ、酒を飲ませた人たちでした。
「自分がリーダーになること」や、「やりたいことをやること」が必ずしも幸せにつながるわけではありません。
それを幸せだと思い込んで、日々を不幸に生活していることこそ、不幸なのです。
また、大切なのは、「会社」ではなく「人」を探すということです。
例えどんな事があってもこの人について行けば大丈夫。
そう思える人とについていくことが、今の時代を生きていく上での指標になるのです。
自分が成功せずとも、身近にいるちょっとした成功者にくっついていけば、食いっぱぐれることはありません。
世の中は、その程度には豊かなのです。
(参考文献)