【北欧神話】欲が強すぎたオーディン —— あなたは知識のために、片目を差し出せますか?

知識
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本日は、北欧神話シリーズ第三弾ということで、「オーディン」についてです。

オーディンに対する信仰の歴史は深く、1世紀ごろにローマの歴史家が書いた『ゲルマニア』という本が、最古のものとされています。

世界の創造主

世界の創造主で最高神「オーディン」。

彼の肩書きは、多数あります。「全知全能の神」「戦争と死の神」「詩文の神」「魔術と狡知の神」「偉大で崇高な神」などなどです。

姿は、サンタさんのような長いヒゲと、つばが広い三角帽、黒く長いマントをひるがえした老人です。アニメなどに登場する「魔法使い」そのものです。

また現に魔法に優れており、策略事や謀り事といった「権謀術数」に秀でており、人心を惑わすこともいとわない性格でした。

さらに戦場では、魔法使い姿から一変、金ピカの鎧兜に、青いマントをまとった姿となります。武器は、魔法の槍「グングニル」。彼の手から放たれたこの槍は、必ず敵を貫き、自動で持ち主の手に戻るという優れもの。

愛馬は8本の足を持つと言われる「スレイプニル」。この馬は、あらゆる馬の中で最も早く、空を駆けることができ、死者の国へも赴くことができるとされています。

勉強大好きオーディンさん!

オーディンには、「知識を得るために、自らの目を差し出した」というお話があります。

世界を包み込む世界樹「ユグダラシル」の根本に、「ミーミルの泉」がありました。そこには、知恵と魔術をもつ賢者「ミーミル」という神様がいました。

オーディンは、その泉の水を飲めばたちまち賢くなれると知り、ミーミルに「飲ませてほしい」と頼みます。しかし、ミーミルは「ロハではダメじゃ」と代価を要求してきます。

するとオーディンは即決で、眼球を抉り出し、泉の中に投げ入れてしまいました。

片目を代償に、泉をごくりと飲んだオーディンは、知恵と魔術を手にしたのでした。

文字を習得するためにも、体を張るオーディンさん!

ミーミルの泉によって、知恵を得たオーディンは、次に、ルーン文字というものに興味を持地ます。

泉の情報によれば、「この文字を会得するためには、ユグドラシルの木に逆さ吊りになり、槍に突き刺されたままで、“9日9夜“ を自分自身「最高神オーディン」に捧げなければならない」とのことでした。

「しゃーないか……」とオーディンさんは、即この「首吊りチャレンジ」を開始します。

情報通り、グングニルで自らを刺し、逆さ吊りの状態で “9日 9夜” を「自分に」捧げました。

そして最後の日の夜、運よく縄が切れてオーディンは助かり、ルーン文字をマスターしました。

のちに、この地獄を経験したオーディンさんは、自らを語りました。

「血が滴り落ち、生気が失せていく私を見ても、誰もパンひとつ与えようとしなかった。本当に死ぬかと思った」

そう誇らしげに語ったオーディンさんは、ドMの極みだったのかもしれません。

※このことより、タロットカードに登場する「吊るされた男」のデザインは、オーディンをモチーフにしているという解釈があります。

ラグナロクを知っていたオーディンさん!

片目の相性として得た泉の情報は、ハンパないものでした。

なんと、「いつの日か、アース神族は巨人族と戦い、滅ぼされる」という最終戦争「ラグナロク」を予言していたのです。

このことを知ったオーディンは、世界中から情報と同時に、力を集め始めます。バラバラだった神々を組織化し、協力体制を築いたのです。

オーディンは、この戦の準備のために、本当にたくさんの手段を用いました。

まずは、二羽のカラスと、二匹のオオカミを使う方法です。「フギン(思考)」「ムニン(記憶)」の二羽のワタリガラスと、「ゲリとフレキ(貪欲なもの)」の二匹の狼。彼らに世界中のさまざまな情報を集めてもらいます。

他にも、

●宮殿(ヴァーラスキャールヴ)にある、世界を見渡せイス「降りズキャールヴ」に座る

●わざと戦さを起こし、ヴァルキリー(戦乙女)に戦死者の魂(エインヘリヤル)を集めさせる

●宮殿(ヴァルハラ)で、戦死者の魂(エインヘリヤル)を日夜殺し合わせる(鍛錬)※

さらに、最終兵器として、魔力で忘我状態となった戦士ベルセルクを用意するなどもしていました。彼らは、自らを「動物の毛皮を被った魔物だ」と信じ込んで、戦うのです。

ベルセルクは、敵も味方も関係なく、狂ったように戦うので、味方ですら震え上がったといいます。

※『ヴァイキング 〜海の覇者たち〜』というドラマに、たびたび「ヴァルハラ」という言葉が登場します。ヴァルハラでは死者の魂が、殺し合い、死んでもまた夕方には生き返り、翌日はまた演習ということを繰り返します。そのため、最強の軍団が出来上がるわけです。このような背景があるので、北欧神話を信仰していたヴァイキングたちは、戦争の中で死に、オーディンに気に入られることを夢に見ていたのです。

おわり

オーディンを一言で表すなら、「目的のためなら手段を選ばない神」と言えるでしょう。

ベルセルク件もそうですが、他にも、息子が殺された時。

オーディンは、その主犯であるロキを捕まえて、ロキの息子を殺してしまいました。さらに、その息子の腸で、ロキの手錠としたのですから、少し怖いです。

またこうした因果もあってか、オーディンは、最終戦争ラグナロクで、ロキと女巨人との間に生まれた魔娘フェンリルに丸呑みにされる、という最期を迎えました。

ボーナストリビア;他の神話にも登場する「三叉の槍」

オーディンが「死と戦争の神」といわれる所以ある「グングニル」。この三叉の槍は、とても有名です。

しかし、なんだかこの「三叉の槍」というのは、よくこんがらがりませんでしょうか? ロンギヌスだったり、トライデントだったり、ゲイボルグだったり、はたまたグングニルだったり。

ここでは、それら「三又の槍」シリーズをしっかりとまとめていこうと思います。

まずは、「ロンギヌスの槍」です。

これは、『エヴァンゲリオン』で有名ですね。もともとは、「イエスキリストを十字架に貼り付けるために使用された槍」です。この時、槍を刺したのが、ローマ帝国のロンギヌスという人物であったことが、名前の由来です。

またロンギヌスは、当時、盲目であったのに、イエスの返り血を浴びたことで、視力を取り戻したという逸話もあります。その洗礼により、聖ロンギヌスと呼ばれるようになったとか。

続いて、「トライデント」です。

この槍は、ギリシャ神話に登場する “海の支配者“「ポセイドン」が持ってる武器です。また別の神話、ローマ神話では「ネプチューン」も、この武器を使っています。

嵐を呼んだり、地震や津波を起こしたり、水を操ることができる武器です。

最後に、「ゲイボルグ」です。

これはケルト神話に登場する「クー・フーリン」なる半神半人の英雄がもつ武器です。この神話に出てくる三又の槍は、他の槍とは違う攻撃の仕方をします。

まず、投げる銛のような形にトランスフォームします。すると、30本の矢が相手に降り注ぐのです。

続いて、突き刺した場合。この時は、30のトゲが飛び出し、そのまま破裂するのです。

(参考文献)

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