今回は、『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる一つの習慣』という本から、「仕組みは進歩するのに最適」について取り上げます。
目標は大切。でも……
目標と仕組みの違い。
それは、目標が「達成したい結果」であるのに対し、仕組みは「その結果へと導くプロセス」であるという点です。
では、なぜ目標より、仕組みを優先すべきなのでしょうか?
それは、3つの事柄が原因です。
勝者も敗者も目標は同じ!
一つ目の問題点は、「その環境にいる人は、皆、同じ目標である」という点です。
その大会に出場する選手は皆、「優勝」を目標にします。 面接にくる人は皆、「内定」を目標にします。 合コンにくる人は皆、「カップル成立」を目標にします。
しかし、このような目標を設定するとき、私たちの中にバイアスが生まれます。
「生存バイアス」です。
「生存バイアス」とは、生き残ったもののみを評価する、という見方です。
つまり、私たちが目標を掲げたとき、目線は自然と、勝者や成功者へと流れてしまいます。
そのため、そこに、同じ目標を掲げて奮闘していた、敗者や失敗者がいたことを忘れてしまうのです。
目標は一時的!
目標達成とは、あくまで一時的な結果にすぎません。
大会で優勝することも、ビジネスで成功することも、結婚することも、全て、一時的な結果に過ぎません。
勉強しない子供を、親が叱れば、彼らはノートを開き、椅子に座り続けることでしょう。
しかし、勉強が嫌いであれば、程なくして、机の上にうっつぶせることになります。そして、寝ている子供をまた、叱る。
達成は、日常を一時的に変えるにすぎません。
一瞬を、永久にするには、仕組みレベルで解決する必要があるのです。
「目標=幸せ」ではない!
目標に対して、私たちは無意識に「目標を達成したら、幸せになれる」と考えます。
つまり、目標第一主義は、幸福を未来のものだと考えるのです。
また、この考え方は、「二者択一」の考え方を生み出します。
その二者とは「目標を達成し幸福になる自分」と「達成できず失望する自分」です。
人生が思い通りにいくはずはなく、成功の道は多様です。
しかし、成功への、幸せへのシナリオは一つしかない、と考えてしまうのです。
おわり
最終的に、目標第一に考える問題点は、「長続きしない」という点にあります。
●その日の気分次第で、達成できるかどうかが変わる。 ●たとえ達成できても、その余韻はすぐになくなる。 ●ゴールと共に、次のアクションをやめてしまう。
多くの人は、目標達成と共に、目標達成前の自分に戻ってしまうのです。
ですので、もっとも大切なことは、「終わらないこと」です。
終わりのない改善、継続的な向上サイクルを作ることが、なによりも重要なのです。
おまけ雑学:犬もノイローゼになる!
「三浦しをん」さんが書かれた『人生劇場』というエッセイで、面白い話がありました。
あるとき、ニューヨークでテロが起こり、たくさんの救助犬が出動することになりました。
瓦礫の山の中から、まだ息のある人を探し出すために、来る日も来る日も、犬たちは一生懸命、捜索を続けました。
しかし、残念なことに(?)瓦礫の下敷きになって救助を待っている生存者は、1人も見つかりませでした。
そしたら、なんと救助犬たちはノイローゼになってしまったのです。
「こんなに必死に探してるのにどの瓦礫の下にも僕たちを待っている人がいない。探し方がまだまだ甘いのだろうか? もしかして僕は自分の鼻の能力を過信していたのではないだろうか?」
成果が上がらないことで、犬は自信を喪失し、無気力になってしまったのです。
そこで、犬と一緒に捜索に当たっていた消防隊員が、わざわざ瓦礫の影にこっそり寝転がり、救助を待つふりをしたそうです。
犬は喜び勇んでサクラの消防隊員を発見し、消防隊員はよくやったと犬をねぎらう。
何らかの目標を設定し、それが達成されないと絶望する。
犬たちも、知らないうちに「二者択一」の罠に落ちいてしまっている、というわけです。