「怒り」は「苦」の一部
前回の記事では、「苦」に対する感情について取り上げました。
人も動物も、「苦」という感情を抱きます。
違いは、「苦」をまた別の「苦」へと転換させてしまうかどうかにあるということを書きました。
そこで、今回は、「苦」に似た感情である、「怒り」について取り上げます。
「苦」という言葉には、「怒り」の感情も含まれていると思います。
例えば、上司に怒鳴られて抱く「怒り」、両親に勉強を強制されて抱く「怒り」など、これらは、「苦」の感情の一部と言えます。
”怒り”は 6秒しか続かない
そして、近年の研究では、このような「怒り」の脅威が、長く続かないことがわかっています。
例えば、誰かから暴言を浴びせかけられたとします。
この時、怒りで身体が熱くなり、全身の筋肉が硬くなります。
(※ 具体的には、脳内で大脳辺縁系がアドレナリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質を吐き出し、心と身体を戦闘状態に変えるため)
このような状況で何もしないと、あなたは相手へ暴言を吐いたり、殴りかかったりします。
しかし、ここで少しだけ待つと、脳が勝手に、「怒り」の感情を無効化してくれます。
(※ 前頭葉(理性)が大脳辺縁系を抑えにかかり、少しずつ神経伝達物質の影響を無効化していく)
この、理性(前頭葉)が起動するまでの時間は平均で 4 ~ 6秒です。
そこからさらに、 10 ~ 15分も経てばアドレナリンやノルアドレナリンの影響力は、ほとんど消えて、怒りが鎮まるのです。
おわり
つまり、私たちが抱く「怒り」のほとんどは、平均6秒くらい耐えれば、消えてしまうということです。
これはすごいと思いませんか!
私たちは、一度「怒り」を抱くと、それを四六時中、ネチネチと引きずります。
そうではなく、よく言われるように、「一度、深呼吸!」をしてみてはいかがでしょうか。
深呼吸でも、目をつぶるでも、なんでもいいです。
とにかく、今抱いている「怒り」という感情を6秒間だけ忘れられるように努力してみてはいかがでしょうか!
ボーナストリビア:目の前の「誘惑」は、ゲームで耐えよう!
「怒り」と同様に、「誘惑」も、私たちにとって耐えがたいものだと思います。
しかし、この「誘惑」も感じなくする方法があります。
プリマス大学の実験では、まず被験者に「いま最も食べたいものについて考えてください」と指示ししました。
好きな食べ物や飲み物、薬物など、とにかく好きなものを自由に思い浮かべさせ、欲望をかき立てました。
続いて、被験者の半分に「テトリス」を 3分間だけプレイしてもらいました。
すると、おもしろい変化が起きました。
ゲームをしたグループは、そうでない被験者に比べ、渇望のレベルが 24%も下がり、カフェインやニコチンにさほどの魅力を感じなくなったのです。
なぜこのような現象が起きたのでしょうか?
それは、神経伝達物質(ドーパミン)の影響力が下がったからです。
人は、欲しいものを前にした時、ドーパミンを分泌し、その欲望をかき立てる方向に働き始めます。
ドーパミンは人間のモチベーションを掻き立てる物質で、いったんその影響下に置かれたら逃れることは、ほぼ不可能です。
しかし、欲望を抱いた直後にゲームで脳の注意を一時的にそらすことで、ドーパミンによる支配力は薄れ、前頭葉の自己コントロール能力が戻り始めるのです。
ドーパミンの持続時間は平均 10分前後です。
10分程度で、あまり中毒性のなく、楽しいゲームを自分なりに探すといいですね!
(参考文献)