雲の柱
その後、イスラエルの民たちは、雲の柱を頼りに進んでいきました。
雲の柱とは、神が作り出した道標です。民たちの進むべき道を示してくれます。また、夜になると、火の柱となる優れもの。
そんな民たちが向かう場所は、「カナン」。
モーセの家族たちが暮らす地です。
ただこの時、モーセには一つの懸念がありました。
それは、実家のカナンまでの道のりが、遠回りになっていたことです。
ファラオ、再び
一方その頃、ファラオはというと。
奴隷を失い、長男も亡くした悲しみで、数日の間、呆然としていました。
しかし、そう何日も悲しみにふけっている時間はありません。
国は、これまで奴隷によって運営されていた仕事が進まない、との苦情が殺到し、長男を失った家族からの悲痛の叫びが止みませんでした。
このような状況から、ファラオが抱いた悲しみの感情が、次第に怒りへと変わりました。
そしてついに、ファラオは家来を集め、言いました。
「私が間違っていた。いますぐ彼らを連れ戻そう」
ファラオと同じように、イスラエルに恨みを持つ民たちが、声を上げ、賛成しました。
それからすぐに、軍が召集され、600 台の戦車を先頭に、騎兵と歩兵が出陣しました。そして、ファラオも、自ら戦車に乗り込み、先頭に立ちます。
その勢いは凄まじく、ものの数日で、イスラエル人たちが野営しているのを見つけました。
海よ、割れろ!
イスラエル人たちは、雲の柱が示す通り、海の前に野営を張っていました。しかし、そこになんとファラオたちが攻め込んできたのです。
民たちは、悲鳴をあげ、モーセに非難と怒声を浴びせました。「なぜ連れ出したんだ!」「こんなことなら、奴隷の方がマシだ!」
しかし、モーセは、冷静でした。
「慌てるな。案ずることはない。主があなたたちのために戦ってくれる!」
すると、神が現れ、モーセに言いました。 「あなたの杖を、海に向かって差し伸べなさい」
モーセは言われた通りにします。
すると、なんと海が二つに分かれました。水が壁のようにそそり立ち、道を作り出したのです。
その有様に、エジプト軍もたじろぎました。しかし、それでもと進軍してきます。
しかし、そこに、雲の柱が立ちはだかりました。エジプト軍は得体の知れない雲と戦いますが、一向に進軍できる気配がありません。
そして、そうこうしているうちに、イスラエルの民は皆、対岸へと渡ったのでした。
おわり
全員が渡り終えると雲の柱は消え去りました。
エジプト軍は、それでもと、全速力で彼らを追撃をします。
そこで、神はモーセに命じました。
「もう一度、枝を海の上に差し伸べなさい」
すると、壁のようになっていた水が元に戻っていきました。
そして、進軍していたファラオとエジプト軍は、たちまち海に飲み込まれ、全滅してしまったのでした。
この出来事がきっかけで、イスラエル人を神をほめたたえるようになったのでした。
ボーナストリビア:イスラエルの名に隠された秘密
「イスラエル」という名前には、”神が戦われる” という意味があるとされています。
エジプト軍を前にモーセがいった「主があなたたちのために戦ってくる」という言葉は、イスラエルの名前に重ね合わせ、語ったのかもしれません。
(参考)