乳と蜜の流れる場所「カナン」
神はある日、「カナン」という土地を、アブラハムに与えます。
この土地は、神がアブラハムの子孫に与えると約束した土地であり、のちに「約束の地」とも呼ばれるようになりました。
そして神は言いました。「あなたの子孫は海の砂のように多くなるだろう」
しかし、アブラハムは、そのことを信じられませんでした。というのも、アブラハムの妻・サラは不妊症を患っていたからです。
信じようとしないするアブラハムに対し、神は約束のしるしとして、牛と山半、羊と鳩を殺し、2つに割いて並べるように指示しました。
これは、この時代、約束事をする際の風習です。
まず、動物を殺し、その死骸を二つに裂く。その後、契約者と被契約者が歩いて通過する。
これには、「約束を破ったら、私もこの動物たちと同じようになる」という意味が込められています。
今でいうところの、「指切りげんまん」に近いかもしれません。
神様ドタキャン?
アブラハムは、神に言われて通り、儀式の準備をして待っていました。
しかし、神が現れる気配は一向にありません。アブラハムは、ただ来るかもわからない神様のために、死骸に群がってくる鷹たちを追い払うだけでした。
もちろん、アブラハムも人間ですので、限界があります。日も沈みかけた頃、アブラハムは眠気に襲わてしまったのです。
そしてアブラハムが深い眠りに入ると、一つの燃えさかる松明が現われました。その松明は、動物の間をスーっと、通り過ぎたのです。
それから「あなたの子孫にこの土地を与える」といって、姿を消しました。
この時、アブラハムは寝ていたので、契約は神が一方的にしたことになります。つまり、アブラハムとその子孫が、もし契約を破っても、その責は神が負うというのです。
これがイスラエル民族と神の間に交わされた契約です。
そして、この契約の通りに、イスラエルはこの後、どんなに神に逆らっても、神はイスラエルを守り続け、カナンの地はイスラエルのものであり続けたのでした。
夫婦のセカンドライフは100歳から!
その後、契約の通り、アブラハムとサラの間に、息子「イサク」が生まれます。
この時、アブラハムが100歳、サラが 90歳という年齢でした。
アブラハムたちは、幸せな気持ちになりながら、イサクを大切に育てました。
神の友・アブラハム
しかし、イサクが順調に成長し、少年になった頃、事態は一変します。
神はなんと、アブラハムに、イサクを焼き殺し、捧げ物とするようにいったのです。
アブラハムは、神が何をいっているかわかりませんでした。神との契約によって生まれた子供なのに、それを殺すなんて。
アブラハムはそんなことを思いながらも、それでも素直に従いました。
アブラハムは、イサクの息子「ヤコブ」も連れて、モリヤの山に登りました。それから、祭壇にイサクをのせ、ナイフを振りかぶる。振り下ろす。
と、その時、天使が空から現れ、アブラハムの手を掴みました。
そして神は言いました。
「あなたが神を信じていることはわかりました。あなたはたった一人の息子さえ、惜しまなかったのですから」
神は最後の最後に、アブラハムを信頼に値する人間かどうかを試したのでした。
おわり
この後も、アブラハムは神に愛され、神に信頼され続けました。
人からは「神の友」と呼ばれ、新約聖書では「信仰の父」ともいわれるようになったのでした。
ボーナストリビア:ア〜ブラハムには8人の子♪
みなさんは、アブラハムには8人の子供がいることをご存知でしょうか。
童話では「7人の子♪」となっています。しかし、実際には、幻の8人目がいたのです。
まず、一人目は、「イサク」……といきたいところですが、実は、イサクの前にもう一人、子供がいたのです。
名前を「イシュマエル」といい、彼は、女奴隷ハガルとの間に生まれた息子です。
その後、「イサク」が生まれ、サラの死後に、アブラハムは再婚。ケトラをめとり、その間に6人の子どもをもうけました。
こうして、アブラハムは合計8人の子供をもうけました。
では、なぜ「アブラハムには8人の子♪」とならなかったのでしょうか。
理由の一つは、サラがイシュマエルを遠方の地へと追放したことが考えられます。イシュマエルがイサクをいじめるようになったために、ハガルとイシュマエルを別の土地に送り出してしまったのです。
このことから、「アブラハムには7人の子♪」という歌詞になったと考えられます。
ただ、その後、イシュマエルの子孫も大きなー族となりました。それは、やがてアラブ人となり、この血筋は、現代にも繋がっています。
今、アラブ人はイスラエル周辺の国々を形成し、何度も争いを起しています。イシュマエルとイサクの争いは、今も続いているのです。
そして、2020年8月、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンが、アラブ国家として初めてイスラエルと国交を樹立するという出来事が起こりました。
これはつまり、イシュマエルとイサクは共にアブラハムの子どもであることを宣言したことになります。
このことからこの約束は、「アブラハム合意」と名付けられました。
(参考)