偵察
3万人いた戦士が、300人となると、神は言いました。
「さぁ、準備は整いました。まずは、夜に戦士1人連れ、ミディアン人の陣営を偵察してきなさい」
その夜、ギデオンは、「プラ」という戦士を連れ、ミディアン軍の陣営へと向かいました。
イスラエル軍を舐め切っているミディアン軍は、当然のように、見張りさえいませんでした。
夢で怯える戦士たち
ギデオンとプラハ、ミディアン軍の天幕に近づき、そこでの会話に耳を傾けていました。ある声が聞こえました。
「俺……昨日、夢を見たんだ。それがよ……巨大なパンが転がってきて、俺らの天幕を押しつぶしてしまうっていうヤツで……」
そして、それに答えるように。
「それはきっと、イスラエル軍だな。噂で聞いたんだが……。今、イスラエルはギデオンっていう奴が指導者になってて、かなりの戦士が集まってるらしいぞ」
「え、じゃあ。その夢は、俺たちが敗北する予言ってことか」
それから行われた、天幕での会話は、皆、まだ見もしないイスラエル軍にただただ、怯えている、というモノでした。
自信満々のギデオン
天幕で話されていたことを耳にしたギデオンは、自身がみなぎり、陣営に戻って言いました。
「さぁ、いくぞ。神が私たちに勝利を下さる」
それから、ギデオンは、神から言われた通り、全員に「松明(たいまつ)」と「面」を持をもたせ、ミディアン軍の陣営を三方から囲みました。
そして、ギデオンが角笛を吹くと、戦士たちは一斉に松明をかざし「この件は神のため、そしてギデオンのために!」と叫びました。
おわり
すると、ミディアン軍は、真っ暗闇の中パニックに陥り、同士討ちを始めてしまいました。
そして、「このままではまずい」と感じた、ミディアン軍は、命からがら退却していきました。
こうして、ギデオンは、神が約束した通り、大勝利を収めたのです。
それから40年。
ギデオンは指導者として、イスラエルを治め続けました。
ボーナストリビア:角笛の意味
聖書において、角笛は、大切な意味を持っていました。
まずは、時計としての意味。
荒野を旅していたイスラエルの民にとって、角笛の音は時計と同じものでした。朝と夜に、祭司が角笛を吹くことで、民たちは活動していたのです。
また、他にも、宿営をたたみ、出発する時にも角笛を吹いたり、戦いの合図や、また「角笛の祭」と呼ばれる新年の祭りにも、長々と角笛が吹き鳴らされました。
キリシタンにとって、角笛は、神の定めた計画を表します。
時間の流れも、戦さの開始も、祝賀も。
全て、神が定めた計画で、その合図として、角笛を使っていたのです。
余談になりますが、このような背景のある角笛は、現代のフィクション作品にも多く登場します。
例えば、C・S・ルイスが書いた児童文学の傑作、「ナルニア国物語」。今作では、作中に「吹けば、必ず助けがくる」という“角笛“が登場します。
このような、不思議な力を持った角笛が登場するのは、C・S・ルイスがクリスチャンであったことと、無関係ではないでしょう。
また、C・S・ルイスの友人であるトールキンが書いた『ロード・オブ・ザ・リング』にも、角笛が登場します。
第三部で、セオデン王が率いるローハン軍が、ミナス・ティリスを包囲してる敵に突撃するシーンです。
このように、クリスチャンにとって「角笛」は、とても大きな意味を持つ者だったのです。
(参考)