仕事がない
久しぶりに我が家に戻ってきた、ナナミとルツ。
ただ、外から来た彼女たちに、ろくな仕事はありません。
しかし、ルツは、イスラエルの律法を学習していました。律法によれば、貧しい人は、「落ち穂拾い(※)」の仕事をする権利があると記されているのです。
そこでルツは、落ち穂拾いの仕事をしようと、町中の家という家を回り、ボアズという裕福な男が運営する畑で働くことになりました。
※落ち穂拾い……収穫の終わった畑に落ちている麦の穂を拾う仕事
熱心に働くルツ
そんな彼女の噂は、たちまち広まりました。どんな人かと、町中の人が、彼女が働く畑へと集まって来ました。
当然、主人であるボアズの耳にもそのことは入ります。そして、ボアズはそんな彼女の働く姿に魅了されてしまいました。
ある夕のことです。ボアズはルツを食事に誘いました。
ルツは最初、恐縮とばかりに遠慮していました。しかし、「それでも」とお願いしてくるボアズに、断りを言うことができず、一緒に夕飯をいただくことになりました。
夕飯後、ルツの帰る姿を見ながら、ボアズは使用人に言いました。
「明日、彼女の前に、たくさんの穂を落としておきなさい」
おわり
翌日、ルツが家に帰ると、ナナミは目を見張りました。
「まぁ、こんなにたくさん! どうしたの?」
ルツは、自分が働いている主人のこと、昨日の夕飯のこと、今日起きたことなどを話しました。
その話を聞いたナナミは、「まぁ」と驚き、「その方はわたし達の親戚ですよ。なんという偶然、いや神の恵み。その畑なら安心して働くことができます」と言いました。
こうして、ルツは、収穫の季節中、この畑で働き続けることができたのです。
ボーナストリビア:『落ち穂拾い』
もうお気づきかもしれませんが、フランスの画家であるミレーが描いた『落ち穂拾い』は、このルツのエピソードが元になっています。
そして、このような背景から、『落ち穂拾い』は、農村の貧しい人たちを描いた作品であるともいえます。
またミレーは、同じテーマで『刈り入れ人たちの休息』という作品も残しています。
これは別名「ルツとボアズ」ともいいます。
(参考)