ボアズのプライド
翌朝、ボアズは、親族からルツとの結婚の許しをもらうために奔走しました。
ただ、ボアズも男としてのプライドがあります。
結婚したい気満々だと、体面が悪い。
そこでボアズは、遠回しに、自分がルツと結婚するように、親族たちを誘導しました。
「実はですね、エリメレクの土地について相談があります。ナオミが帰ってきていることは御存じでしょう? でも、あの家族には男が居ません。そこで、親族がナオミの義理の娘、ルツをめとり、土地を受け継ぐ責任があるのですが……どうでしょうか、あなた!」
親族は答えました。
「んー、私にはそこまで責任を負うのは難しいですね。ボアズ、あなたがその責任を果たすのが一番いいのですが……」
そしてボアズは、しばらく考えた後、言いました。
「わかりました。私が彼女と結婚しましょう!」
こうして、ボアズは親族の同意と証人を得たのでした。
おわり
こうして、ボアズとルツの結婚式は無事行われ、町中から祝福を受けました。
その後、ルツとボアズは幸せに暮らし、「オベド」という男の子を授かりました。
これで、『歴史書』“ルツ記”の物語は終了です。
余談になりますが、この、ルツから生まれたオベドから、のちに、「エッサイ」を生まれ、そして、「エッサイ」から、やがてイスラエルの王となる「ダビデ」が生まれるのです。
ボーナストリビア:ボアズの過去
“ボアズがルツと結婚した“という出来事には、実は裏の事情があります。
聖書の細部を調べると、ボアズの母親はなんと、エリコ村で、命を救われたラハブだったのです。
あの、赤い紐のお話です。
つまり、ボアズは、純潔のイスラエル人ではなく、外国人との混血だったのです。
そして、そんなボアズは、外国人がイスラエル民たちの中で生きていくことの難しさを、母親の姿を見て知っていました。
母親の苦労を知っていたからこそ、ルツの願いも、快く引き受けたのでした。
また、純潔でないラハブとルツですが、不思議なことに、新約聖書に登場する「イエス・キリストの系図」なるものに、彼女たちの名前が載っています。
一般的に、神に選ばれた「選民」であるイスラエル人は、他の民族と関わりを持たない格式高い民族のように考えられています。
しかし!
その実は、他民族も受け入れる、心の広い民族だったのです。
(参考)