「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」で知られる『学問のすすめ』。
身分の低い家で生まれた福沢諭吉は、封建社会(階級社会)からの脱却を求め続けました。
『学問のすすめ』はその決意表明の本といえます。
日本だけでなく、海外でも読まれ続けてきたベストセラー。
今回は、そんな本書の簡単な概要をまとめようと思います。
自由とは何か?
「人はみな自由であり、平等である」
これが本書の基本理念です。
ですが、「自由」というのは、なんでもし放題というわけではありません。
本書に書かれている「自由」の定義は、「独立できる」ことです。
「独立」とは、他から干渉を受けずに活動でききること。そして、そのために必要なのが、「独立心」をもつことです。
「独立心」とは、他者を頼らず、自分の身は自分で始末がつけられるという信念です。
何か問題を抱えている時に、自分では何もせず、人に依存してばかりいると、次第に自分の主体性がなくなっていきます。そんな人を本書では「寄食者」と言っています。
主体性がなくなれば、言葉は卑しく、態度は卑屈になってしまう。そしてやがて、それがその人の人格となり、誰も助けてくれなくなってしまう。
だから、私たちは、「独立心」をもち、「独立」へに向け、「努力」し続けることが重要なのです。
そしてその努力の道として、「学問がおすすめですよ〜」と紹介しているのです。
学問って何?
この時代(明治)の学問とは、「実学」のことです。
実学は、今でいう「国語」「算数」「地理」「歴史」「物理」「経済」「倫理」のことで、つまり、実生活に役立つ学問のことです。
そして、学問は、ただ知識を入れるだけではダメだと説いています。
身につけた知識を実際に使用し、経験することで初めて「学問」になる、というのです。
学んだことを実社会で生かしていく。
それが本当の学問なのです。
また、身につけた知識を実践に生かす時に役立つのが、「体」「知恵」「情欲」「誠実さ」「意志」の5つの要素です。
この5つの要素を自在に使いこなすことで、自己の独立へとつながる学問をすることができるのです。
人生の棚卸し(たなおろし)
独立者になるために必要なのは、「行動力」。
この行動力なくして、独立者としての人格を身につけることはできません。
しかし、この行動力も、自分の理想と能力がかけ離れすぎてはいけません。
自分の能力に見合わない理想をもつと、絶えず、現実の自分との乖離に不安を覚えてしまうからです。
『論語と算盤(ろんごとそろばん)』という本に、「かに穴主義」という言葉出てきます。
カニは、自分の甲羅に合う大きさの穴しか掘りません。
つまり、身の丈以上のことをしないという考え方です。
私たちは自分の能力を高めることを忘れてはいけません。
ですが、同時に、自分の能力を知ることも忘れてはいけません。
そこで『学問のすすめ』では、「人生の棚卸し」という方法が紹介されています。
「棚卸し」は、商店が毎月、手持ちの商品を調べ、損益計算をし、商品の価値を評価することです。
これを自分の人生に対しても行うのです。
「自分の現状を過大評価していないか」
「今の自分は一体何をしているのか」
「これからどうするべきなのか」
このように、「人生の棚卸し」では、主に、自分の精神面、目に見えない面をしっかりと評価することが大切です。
自分自身をしっかりと観察することができれば、人は、よりクリアなメガネで独立への階段を登ることができるのです。
努力しようぜ!
本書では、このように、独立者になる意義、方法、それから独立者としての務め、などが紹介されています。
ただ結局、この本で言いたいことは、「努力をしましょう」ということです。
努力はその人の運命を変える力があります。
努力があれば、今日の愚者も、明日の賢人になり得るのです。
努力を忘れなければ、貧しき弱者も、富める勝者に変われます。
「人はみな平等である」という内容が書かれたモノだと思われがちな本書。
ですが、その本の中身は、「人は皆平等。されど、学問で不平等が生じる」というモノでした。
つまり、「努力しまくって、金持ちになろうぜ!」「努力で、差をつけようぞ!」というのが、本書で一番言いたかったことなのではないかと思います。
人は、みな平等。
されど、それは生まれた時点での話。
生まれた瞬間から、どれだけ努力したかで人生が決まる。
『学問のすすめ」』ではなく、『努力のすすめ』。
みなさんもぜひ本書を手に取り、明日からの一歩につなげていただければ幸いです。
(参考文献)