受験生の格言の中にこんな言葉があります。
「やる気はやるまで出ない」
これが真理だと思います。
人は飽きる生き物で、苦労を嫌う生き物で、それに、怠慢な生き物です。
より楽するため。より怠けるために、頭を使ってきました。
それが科学であり、ITであると思います。
「必要は発明の母」と言いますが、「必要は怠惰の父」という方が、正しいのかもしれません。
そんな「怠慢」「怠惰」によって、生み出されたのが「やる気」という言葉です。
というのも、「やる気」という言葉を吐く人は、大抵「やらない人」だからです。
ただそんな「やる気」が、科学の力で、生み出すことが可能になるかもしれません。
今回はそんなお話です。
「10回クイズ」に隠された脳科学
皆さんは、「10回クイズ」をご存知でしょうか。
A:「ねぇねぇ、《みりん》って10回言ってみて」
B:「みりん、みりん、みりん、…………みりん」
A:「鼻が長い生き物は?」
B:「……キリン」
A:「ブッブー!正解はゾウでした!うわー、バッッッっカじゃんねーの!」
小さい頃に、上記のような会話をし、圧倒的な苛立ちを覚えつつ、一方で自分も、Cちゃんに同じことをやった経験のある人が、多いのではないでしょうか。
これを「プライミング効果」と言います。
脳では、先に知覚した事柄が、後に知覚した事柄に影響を及ぼすのです。
これを「プライミング効果」と言います。
先に何かを聞いてしまうと、それに関連した情報の方が、無関係な情報よりも入ってきやすくなってしまうのです。
「プライミング効果」で「やる気」を出す
先ほどの「10回クイズ」では、主に「耳」のところにフォーカスをしましたが、プライミング効果は他にも、知覚できる器官であれば、同じような効果を発揮します。
例えば、「目」で知覚した場合もそうです。
赤い部屋に入った状態で、「果物といえば?」と質問すれば、ほとんどの人が「りんご」か「いちご」を、真っ先に答えるはずです。
それでは、これを「やる気」に変換させるには、どうすればいいのでしょうか。
この場合、「やる気」とは、「やりたくないことを行うための気分」だと定義します。
例えば受験勉強が嫌いな学生がいたとします。
もし、朝起きた時に、机の上に、昨日、途中まで解いた数学の問題が開いてあったらどうでしょう。
もし、スマホをいじっている時に、目の前に「なんで私が東大に」と書かれた紙が置かれていたらどうでしょう。
もし、湯船に英単語帳がプカプカ浮いていたらどうでしょう。
きっと「やる気」が出てくるはずです。
いや、そもそも「やる気」が出てくる前に、「やっている」はずです。
私の大好きな小説にこんな言葉があります。
「いいですか? やればできるなんて聞こえのいい言葉に酔っていてはいけませんよ。その言葉を言うのはやらない人だけです」(『暦物語』より)
何かをする前に「やる気」なんかを出している場合ではないのです。
それでは遅すぎます。
「やる気」という言葉は、やらない時に出てくるものです。
「やる気」を出す前に「やる」。
人はこれを「躍起になる」と言います。
皆さんも、日々を「躍起」になりませんか。