一般的に、討論することで、より安全で無難な決定がなされる、と考えられています。
しかし、このような「3人寄れば文殊の知恵」的な発想を覆す実験が行われました。
リスキー・シフト実験
この実験では、リスクの伴う選択に対し、成功する確率が何%ならチャレンジすべきかを回答してもらいます。
具体的には、「将来の保証はないが、高額の報酬が期待できる仕事に転職すべきかどうか」といった質問を12個行い、それぞれ、成功率が何%あればチャンレジするのかを調べました。
まず、1人で回答してもらった時は、男女ともに、50%以上の成功確率が見込めれば、チャレンジすべきと判断しました。
しかし次に、グループで協議し回答してもらった時には、約47%、つまり、先ほどよりも低い確率でも、チャンレじすべきと判断したのです。
人は、個人よりも、集団で決断した時の方が、よりリスキーな選択をとりがちになるということです。
「みんなで、討論し、選択した決断なんだから安全だ」と考えがちですが、実は、集団の方が、より意思決定がリスキーな方へと傾きやすいのです(リスキー・シフト)。
一方で、安全志向の人が多いグループでは、集団での意思決定も安全な方へ傾きやすいことがわかっています(コーシャス・シフト)。
このように、個人の時より、集団の時の方が意思決定が傾きやすい現象を「集団極化」と言います。
組織の誤った選択の3つの原因
「集団的浅慮(せんりょ)」という言葉があります。
これは、「個人だと正しい選択をできるが、集団になると間違った判断を下してしまうこと」を意味する言葉です。
「集団的浅慮」は、メンバーの結束が強く、反対意見が出にくい集団で、発生しやすいといいます。
そして、「集団的浅慮」が起こる兆候として、3つの事柄があげられます。
「過信」「軽視」「遮断」です。
「俺たちなら大丈夫!」という、自習団の能力への過信。
「素人の意見なんて聞く必要ない!」という、外集団への軽視。
「それは違うと思うけど、言い出しにくい……」という、疑問や批判の遮断。
このような「集団的浅慮」のもとで決定された事柄は、「他の案を考えない」「目標がテキトー」「情報収集が足りてない」「都合のいいものだけを集めてる」「一度却下したものを振り返らない」「リスクとコストの無視」「プランBがない」などといった問題を抱えます。
おわり
また「心理的拘泥現象」というものもあります。
集団で意思決定がなされたとき、その事柄が間違っていることがわかっても、これまでにかけた労力や、抵抗感などにより、決定を正当化してしまう現象です。
このように、集団で議論をすると、リスキーな方向へ傾くことがわかります。
では、どうすればいいのでしょうか。
解決策の一つに「悪魔の擁護者」を立てる、というものがあります。
これは、討論時、決められた人が、多数派の意見に対し、必ず反対意見を述べるというものです。
集団で議論を進めていくと、だんだんと反対意見を述べにくい状況になっていきます。
そこで、あらかじめ特定の人が反対意見を述べるようにしておくことで、誤った意思決定を予防することができるのです。
みなさんもぜひ、試してみてください。
おまけ雑学:人を服従させる5つの要因
私たちは、集団に属した瞬間から、周りに同調します。
その集団と同じ意見の時は良いのですが、違う意見の時、私たちは、自分の意見をなかなか口にすることが難しいです。
また、これは一種の「服従」とも言えます。
このような服従を起こさせる社会的精力の根源には、5つのポイントがあることがわかっています。
報酬を与えられる立場にいる「報酬勢力」。
上司や先輩といった、社会的地位が高い者がいる「正当勢力」。
好意や尊敬をしている者がいる「参照勢力」。
ある分野でスペシャリストな者がいる「専門勢力」。
罰を与える者がいる「強制勢力」。
普段は責任感がある人でも、このような社会的勢力に置かれることで、それが間違っていることでも、服従してしまうのです。