一時期、「あおり運転」が、大きな社会問題となりました。
警察庁によれば、2020年には厳罰化により、1万3062件へ減少したとされています。
しかし、これもあくまでも検挙数です。 実際には、もっと多くの「あおり運転」があると考えられます。
あおり運転は、人間の本性?
年間1万件以上のあおり運転が行われている現代。
アンケート調査を行えば、半数近くのドライバーが「あおり運転」の被害を受けている、と回答するのではないでしょうか。
あおり運転は、車線変更や、追い越しといった、些細なことがきっかけで、起こりやすいとされています。
この原因として、よく考えられるのが、「運転中は、本性が出やすいから」というのが、よく取り上げられます。
運転中は顔が見られにくいため、ちょっとくらい悪いことをしても良いと考えてしまうのです。
追い越されたら、追い越したくなったり、日頃のストレスを発散したくなったりするのです。
敵意帰属バイアス
一方で、社会心理学者は、あおり運転の原因を「敵意帰属バイアス」にあると考えています。
「敵意帰属バイアス」とは、「相手の行為を、敵意(悪意)から生じたものだと考える傾向のこと」です。
これは、あおり運転に限った話ではありません。
敵意帰属バイアスが強い人は、たとえば、満員電車で揺られている時にも、「今ぶつかったのは、わざとだ!」と考え、やり返したり、怒鳴りつけたりするのです。
おわり
「敵意帰属バイアスの強い人」と「攻撃的になりやすい人」には、相関関係があることもわかっています。
研究では、殺人、暴行、強盗といった犯罪で逮捕された青年に、一 般的には敵意がないと考えられる行為に対し、彼らがどのくらい敵意を見出すかの調査を行いました。
すると、敵意帰属バイアスの強い青年ほど、犯罪件数も多いこと が明らかとなりました。
これから、貧富の差が広がっていったとき、日頃のストレスは、いつもならなんでもない出来事に矛先が向くかもしれません。
おまけ雑学:「ネットの炎上」は、「敵意帰属バイアス」の、強化版!
敵意帰属バイアスは、大小はあれど、皆が持っているものです。
そして、そのバイアスが、インターネット上で、集団となって襲うのが「炎上」です。
あおり運転以上に、ネットは、その人の顔が見えません。そのため、より本性を出しやすいのです。
いつもなら何も感じない一言も、その日のストレス度によって、相手の人格を否定したり、「死ね」といった暴言を吐いてしまうのです。
そして、その勢いに、他者が賛同すると、さらに勢いづきます。
その理由となるのが、「社会比較説」と「集団極化」です。
「社会比較説」は、「周りの多くが自分と同じ意見であることで、自信を持ち、その意見がより強化させれること」です。
「集団極化」は、「集団で討論する場合、過激な発言をする人が多ければ、集団の意志もより過激になり、保守的な発言をする人が多ければ、集団もより保守的になりやすい」というものです。
インターネット上では、そのような環境が非常に見つけやすいとなっています。
これによって、その人の「敵意帰属バイアス」はどんどん強くなり、だんだんと「炎上」に快感を覚え始めるのです。
(参考文献)