集団の対立は、自分の所属する集団の仲間意識と、外集団の強い敵対意識によって生じます。
集団間葛藤
人は、自分のチームには思いやりを持ち、他人のチームには、敵意を持ちます。
こうした集団の対立を「集団間葛藤」と言います。
このような集団間葛藤を解決する方法を見つけるためにおなわれたのが、「泥棒洞窟実験」です。
泥棒洞窟実験
この実験ではまず、11歳から12歳の少年を集め、二つのグループに分けます。
二つの集団に分けられた子供たちは、「泥棒洞窟」という名のキャンプ地で、3週間にわたり、共同生活を送ってもらいます。
少年たちは次第に、仲間意識を高めていきます。
1週間が過ぎようとする頃、近くのキャンプ場にもう一つの集団があることを知らせます。そのグループに敵対心を燃やした子供たちは、より仲間意識を強めました。
以上が実験の第一段階です。
次に、実験の第二段階では、勝敗のある競技で、2つの集団を戦わせます。対抗協議によって集団間の敵愾心(てきがいしん)はさらに強まります。
そして最後の、実験第三段階では、交流会を催し、2つの集団の亀裂を、交流で解決させようとします。
しかし、集団間葛藤はより深刻化してしまいました。
そこで、次に、一つの集団では解決できない目標を設定します。
すると、敵対心は減少し、協力してそのトラブルに取り組むようになったのです。
おわり
以上の実験で分かったことは、2つあります。
1つは、集団間葛藤は、勝利や報酬といった賞品がかかった競争などが引き金になること。
もう1つは、集団間葛藤をする時は、単なるグループ同士の交流や接触だけでは無意味であるということです。
このような考え方は、国家間の葛藤にも応用できると思います。
「日本」という国に属している我々は、自然と、自国に仲間意識を持ち、他国には敵対心を持つようになります。
それを、大統領同士の握手や、条約で解消しようとしたところで、土台無理な話です。
人は、交流ではなく、同じ目標を持つことで、一つになったのです。
日本という国も、元々は、国内だけでも色々な国がごちゃ混ぜで、話している言葉も違いました。
それが、「外国に負けない」「近代化じゃ!」という一つの目標を持つことで、皆で手を取り合い、今のような状態になっているわけです。
ですので、もし世界が本当の意味で、一つになるためには、「宇宙人が地球を侵略しにきた!」「AIに人類が滅ぼされる」くらいの、アクシデントが必要なのかもしれません。
皮肉なことに、人類は、滅びを直前にして、初めて一つになるのかもしれませんね。
おまけ雑学:集団で、間違った答えを出す「プロセス・ロス」
集団における話し合いで、メンバーが本来持っているパフォーマンスを発揮できない現象を、「プロセス・ロス」と言います。
その理由として、大きく2つの理由が挙げられます。
1つ目は、「発言のブロッキング」です。何か意見やアイディアを持っていても、自分の発言の番が回ってこず、思考が停止しやすくなる現象のことです。
もう1つは、「フリーライダー効果」です。「他人に任せとけば、いっか」と考え、自分は考えることを放棄し、人の意見に乗っかろうとします。
このような現象によって、たとえ集団の中に正解者がいても、間違った答えを出してしまうのです。
また、「投票のパラドックス」というものもあります。
これは、一見全員の意見を反映した、民主的な判断も、進め方次第では、簡単に操ることができるというものです。
例えば、A・B・Cの三つのグループがあったとします。
それぞれのグループで、何かしらの案をだし、それを投票で決めるとする時。
議長がAを勝たせる必勝法があります。
それはまず、Aを除いた、BとCの2案だけで投票を行います。すると、当然、どちらかが勝利します。ここでは、B案が勝ったとします。
そして次に、AとBの2案だけで投票を行います。
当然、AグループとBグループは、自身のグループに投票しますから、フィフティーフィフティーです。
そこで、重要になるのが、Cグループが投票するのは、どっちという話になります。
最初の投票で、Bグループに負けたCグループは、ほとんどの場合、A案に投票するはずです。
という風に、投票を操ることができるわけです。