今回は、作業効率を上げる心理テクニックを3つ紹介します。
「一貫性欲求」
「一連の行動に、一貫性を持ちたい」という心理を「一貫性欲求」といいます。
この欲求を調べたのが「フット・イン・ザ・ドア実験」です。
「交通安全の市民会」と名乗る人が、「安全運転をしましょうと」と書かれた看板を玄関先の庭に設置させてほしい、と依頼します。
また、この依頼をする前に、あらかじめ、3つのグループに、それぞれ異なる行為を行いました。
一つのグループには、「事前にステッカーの貼り付けを要請」をしました。
もう一つのグループには、「事前に嘆願書への署名を要請」しました。
そして最後のグループには、何もせずに、看板設置を依頼しました。
すると、「事前にステッカーの貼り付けを要請」を承諾した場合、76%の確率で、依頼を承諾しました。
「嘆願書へ署名」した人たちは、47.8%の確率で、依頼を承諾。何もしなかったグループは、16.7%といった結果でした。
つまり、事前に小さな欲求を行うことで、本来の欲求を高めることができるのです。
「オペラント条件付け」
他人からの「肯定」「否定」によって、人の言動は変化します。
「肯定」された場合は、「やっぱり正しいんだ!」と思い、以降もその意見を持ち続けます。
「否定」された場合は、「正しくないのか……」と思い、自分の意見に自信をなくし、以降は別の意見を持つ傾向が強くなります。
こういった態度の変化を「オペラント条件付け」と言います。
「オペラント条件付け」は、「肯定と否定」だけでなく、褒められるといった「報酬」や、怒られるといった「罰」を与えられた場合にも発生します。
人は、他人に「肯定」されたり、「報酬(褒めるなど)」をもらったりすると、以降も同様の場面で同じ行動をとる傾向が強くなります。
一方、他人に「否定」されたり、「罰(叱るなど)」をもらったりすると、以降はその行動を取らない傾向が強くなるのです。
「飴と鞭」をうまく使い分けることで、「オペラント条件づけ」は、大きな効果を発揮します。
「ホーソン実験」
続いて紹介するのは、「ホーソン実験」です。
作業効率を上げるには、周りの環境がとても重要であることは、皆さんが感じてることだと思います。
しかし、この実験では、労働環境において重要なのは、「労働条件」ではなく、「人間関係」であることがわかりました。
ホーソン実験の第一段階では、「労働条件」、つまり、部屋の温度や、労働の日数、休憩の回数、休憩中の飲食物などが、労働にどのように影響するのかを調べました。
結果、「労働条件」が良い方へ変化すると、生産性が向上することがわかりました。
さらに面白いのは、労働条件が悪い方へ変化しても、生産性は急落することはなく、上がり続けたことです。
続いて実験の第2段階では、従業員の取り巻く人間関係や、一人一人の感情と、生産性の関係について調べました。
結果、社内における人間関係は、フォーマルなものより、社内で自然と生まれたインフォーマルな関係の方が従業員に好影響を与えたことがわかりました。
また、一人一人の感情面は、面接実験を用いて行いました。
すると、彼らの労働意欲の感情は、個々人の過去、主に家庭環境や社会生活の来歴が関係しており、さらに、社内での同僚や上司との人間関係が潤滑かどうかも大きく影響していることがわかりました。
おまけ雑学:報酬は逆効果!
先ほど、「オペラント条件付け」のところで、「報酬と罰」の効果について触れました。
しかし、報酬や罰がかえて、やる気を損なう原因となることもあります。
例えば、大会で優勝すれば「賞金」がもらえる、という報酬をモチベーションに練習などをしている場合。
その行為は、報酬を得るため、罰を避けるためにとる行為となってしまいます。
一方、その行為自体に、目的や意味を見出している人は、好奇心や、行動自体が、彼らにとっての報酬となっているのです。
このことを調べた実験が「アンダーマイニング現象実験」です。
この実験では、絵を描くのが大好きな子どもたちを集め、3つのグループに分けます。
そしてそれぞれのグループに違う指示を出します。
グループA:「上手に描けたら、賞状やご褒美があることをあらかじめ伝える」
グループB:「何も伝えず、絵を描いた後に賞状を与える」
グループC:「何も伝えず、何も与えない」
結果はみなさんのご想像の通り、Aグループだけに、自主的に絵を描く時間の、大幅な現象が見られました。
「絵を描くのが好き」という内発的な動機付けが、「賞状」という外発的な動機付けに変わってしまったのです。
このように、好奇心や面白さを失ったことで、やる気が損なわれる現象を「アンダーマイニング現象」と言います。