本日は、「北欧神話の始まり」について、より深く書いていきます。
あくびする裂け目
北欧神話は、「火」と「氷」、それぞれに覆われた二つの世界から始まります。それは、灼熱の世界「ムスペルヘイム」と極寒の世界「ニヴルヘイム」です。
そして、実はその間にももう一つ、世界が存在します。
「ギンヌンガ・ガップ(あくびする裂け目)」です。
ここは、巨大で空虚な裂け目で、 日本語ではギンヌンガの淵(ふち)、ギンヌンガの裂け目なんて訳されます。
原初の巨人ユミル
ギンヌンガ・ガップには、極寒の世界にある泉から、11の川の水が、注そがれていました。ただ、この水には、毒が含まれており、流れてくる途中で氷結してしまいした。
そこで、灼熱の世界からくる熱風が、それを溶かし、霜へと変えました。
さらに、その毒の霜はやがて巨人へと姿を変え、原初の巨人「ユミル」が誕生しました。また、同じ霜から、今度は、巨大な雌牛「アウドムラ」が誕生しました。
ユミルは、雌牛の乳を飲むことで生活し、雌牛は、周囲の氷や塩の塊を舐めることで、命を繋いでいました。
そして、ある日、アウドムラが舐めていた塩の塊から一人の男が現れます。
北欧神話、最初の神「ブーリ」です。
「ユミル」は「女」、ではない!
ここで少し余談になりますが、ユミルや、ブーリがそうであるように、北欧神話では、男性が、巨人や神、魔女、怪物を生み出します。
「ユミル」と、一見、文字だけ見ていると、「女性なのでは?」と思われるかもしれません。
だが男です。
話を戻します。
その後、ユミルは女巨人を生み出し、ブーリも「ボル」という神様を作りました。
そして、この二人が交わって生み出されたのが、かの有名な「オーディン」「ヴィリ」「ヴェー」の三神です。
オーディンたち兄弟は、成長するにつれ、巨人たちと対立するようになります。
その原因は、価値観の違いだったり、恨みや憎しみだったりします。また、巨人たちの体が、霜の毒によって作られていたことにより、凶暴であったことも、原因の一つと考えられます。
おわり
あとは、これまで書いた通りです。
オーディンたちが、原初の巨人ユミルを殺害し、その血しぶきが同時に、他の巨人たちもろとも殺害。さらに、ユミルの体を隅々まで使い、世界を新しく創造。
詳しくは、こちらを参照してください。
ボーナストリビア:似ている神話たち
世界には、いろんな神話があります。が、それぞれに、似ている箇所が多いのもまた真実です。
例えば、「ユミル殺害」と「ノアの方舟」は、ユミルとノア、血と海、世界の再生と創造、といった点で似ています。
これはまるで、「ロミオとジュリエット」を豪華客船を舞台にした『タイタニック』や、「ダイハード」をバスを舞台にした『スピード』、「ジョーンズ」を宇宙船を舞台にした『エイリアン』などといったような感じです。
舞台を変えるだけで、似たような物語も180度変わってしまうわけです。
また今回、焦点を当てた「ギンヌンガ・ガップ」の物語も、中国を舞台に変えた「老子」の言葉に、似たようなものがあります。
「谷神不死。是謂玄牝。玄牝之門、是謂天地根。緜緜若存、用之不勤。」
「谷神(こくしん)は死せず。これを玄牝(げんぴん)と謂(い)う。玄牝の門、これを天地の根(こん)と謂う。緜緜(めんめん)として存(そん)する若(ごと)く、これを用いて勤(つ)きず。」
日本語に訳すと、以下のようになります。
「谷間の神は、死ぬことなく、水を湧き出させ続ける。これを私は「大いなる女性」と呼ぶ。この女性の原理こそが、天地の根源である」
詳しくは、こちらをご覧ください。
(参考文献)