ギブオンの街
エリコからそう遠くない街「ギブオン」では、町中が大混乱に陥っていました。
「イスラエルの民が迫ってくる!」
「次は私たちの番だ!」
そして、そんな自分たちをなんとかしようと、ある策を練りました。
旅の一団
ヨシュアたちが宿営していると、ある一団が通りかかりました。
彼ら、服がボロボロの、見るからに貧しい旅人といった風体でした。
そして、イスラエルの民が眉をひそめていると、旅人たちは言いました。
「私たちはイスラエルの神のことを聞き、遠い国からやってきた者です。ぜひ、私たちと同盟を結んでいただきたい!」
ヨシュアは、彼らの疲れ切った言葉や姿を見て、信用しました。
そして、神の名の下に同盟を受け入れました。
嘘つきの民
しかし、数日後、ある事実が判明します。
彼らは、遠い国の人ではなく、すぐ近くのギブオンという街に住む住民だったのです。
イスラエルの民からは当然、多くの不満があがりました。
しかし、一度、神の名の下に誓ってしまった約束です。そう易々と破ることはできません。
そこで上がった提案が、「彼らを奴隷にしよう」というものです。
神への恐れ
ヨシュアは、ギブオンの民たちに、嘘をついた理由を問い詰めました。
ギブオンの人々は、恐れ慄きながら答えます。
「私たちは、神がカナンの地すべてをあなた方に与えたと聞きました。私たちは、それが恐ろしくて仕方なかったのです」
「どうか、お気に召すままに私たち使って下さい」
おわり
こうして、ギブオンの人々は、イラエルの奴隷となることで、生き延びました。
そしてやがて、ギブオンの民は、イスラエルの民と同化していくようになります。
ボーナストリビア:ロバと飼い主
今回の物語を受けて、「奴隷なんて不幸だ」「かわいそう」と思われたかもしれません。
しかし、違う見方をすることもできます。
話は変わりまして、イソップ童話に『ロバと飼い主』というお話があります。
この物語は、「奴隷の主人公が新しい主人へと移るたびに、前の主人の方がよかったと思う」という物語です。
主人公は動物のロバ。
ロバは最初、植木屋で飼われていました。
一日中、庭で働かされているにもかかわらず、餌の量は少ない。
割に合わないと感じたロバは神様にお願いしました。「どうか新しい主人を!」
次の日、ロバは陶芸家へと売られました。
しかし、仕事は過酷なものでした。餌は増えたが、一日中レンガを運ばなくちゃならない。
「これなら前の主人の方がマシだ!」
ロバは神様にお願いしました。
「どうか違うところに、お願いします!」
翌日、ロバは皮なめし職人へ売られました。
彼はロバをつるして、殺して、皮をはいで、一束のサンダルにしてしまいました。
■おわり
この物語の教訓は、「不安な人はどこにいっても幸せを見つけにくい」ということです。
奴隷になったから不幸なわけではありません。幸せを見つけられないから、不幸なのだと。
生まれる場所や先天的な能力は操れません。
しかし、幸せを見つける努力は誰にでもできることです。
幸せを求めるのではなく、幸せを見つけていく生き方。
それこそが「幸せな人生」といえるのです。
(参考)