民たちの不安
月日が流れ、サムエルが歳を取ると、民は次第に不安になりました。これから、誰がたみを導いてくれるのか。
そして、民たちがそんなことを考えていたある日のことです。
長老達は、サムエルの前に集まり、言いました。
「あなたも歳を取り、もう長くないかもしれません。そこで、他の国と同じように、王を立てて、国を治めていくのは、どうでしょうか?」
サムエルは、この民の申し出を断りました。
イスラエルの民は、神に選ばれた民。他の国と同じようであってはならないと思ったのです。
神への相談
サムエルが、このことを神に相談すると、神は言いました。
「今は、彼らを言う通りにしなさい。ただし、王を立てると、民もその責を負わなくてはならない。そのことを忘れぬように」
翌日、サムエルは民に、神のことをばを伝えました。
すると、民は答えました。
「それで構いません。私たちには、王が必要なのです。私たちも、他国と同じように、王によって治められる国にしてください」
サウルとロバ
一方、その頃、ベニヤミン族の「キシュ」という男が持つ、ロバが数頭、迷子になる、という事件が起こりました。
キシュは、息子“サウル“に言いました。
「召使、1人を連れて、ロバを探してきてくれないか?」
サウルは父の言う通り、ロバを探しに行きました。しかし、見つかりません。
「これはもう無理だ。もう帰ろう」
サムエルがそういうと、召使がある提案をしました。
「預言者サムエルにお会いしてみるのはいかがでしょう。きっと何か教えてくれるはずです」
サムエルは、「それは名案だ!」と思い、サムエルのところへ向かいました。
サムエルからの一言
また一方で、サムエルは前日、神からあるお告げを受けていました。
「明日、お前の元へ、1人の若者が会いに来る。彼がイスラエルの王となるだろう」
翌日、サムエルの元に、1人の若者とその召使がやってきました。
サムエルは、彼らを食事に招待しました。
「ロバの件はもう、心配ありません。もう見つかっているはずです。それよりも——」
サムエルは、本題に入ります。
「あなたは、イスラエルにとって、重要な人物です。どうかそれだけは忘れないでください」
おわり
サウルは帰り道、食事の時、サムエルの言っていたことをずっと考えていました。
「何で俺なんだ。民族の中でも、小さい一族である自分が、なぜ?」
サウルは、そのことがずっと気がかりで、結局、家についても、家族にはそのことを黙っていました。
ボーナストリビア:王様の耳はロバの耳
ロバといえば、イソップ童話に『王様の耳はロバの耳』というお話があります。
あらすじは以下の通りです。
ロバの耳をした王様は、そのことを皆に隠していました。しかし、髪を切る時には、さすがに隠し通すことができません。そのため、王様の秘密を床屋だけは知っていました。もちろん、王様の命令で、そのことを人に言うのは禁じられています。ただ、それでも、大きな秘密を知ってしまったサムエルは、誰かに話したくてしょうがありません。そこで、床屋は井戸の奥に向かって「王様の耳は、ロバの耳!」と叫びました。ただ、誰も聞いていないと思われたその叫びは、井戸から井戸を通じ、国中がその秘密を知ることとなってしまった、
というお話です。
インターネットなどで、誰でも匿名で、好きなことを叫ベルこの時代。
むしろ、堂々としている方が、情報は広がりにくいのかもしれません。