人は視覚からの情報に大きな影響を受けます。
ただ同様に「聴覚」からの影響も軽視することはできません。
言葉の威力
何かを思考するとき、人は言葉を使います。
そのため、人間が記録している最も古い記憶は、言葉を覚え始めた以降のものだという研究もあります。
思考以外に言葉にさまざまな力があります。
ですので、言葉は誰もが平等に持っている「最強の道具」とも言えます。
「人を欺くこと」
「人を喜ばせること」
「人を殺すこと」
「人を生かすこと」
言葉はありとあらゆる事が可能なのです。
また、そんな言葉でも、特に大事なのが、「自分が発する言葉」です。
なぜなら、言葉によって脳は動き出すからです。
「話す」と「動かす」は同じ脳を使う!
「しゃべること」と「体を動かすこと」は同じ脳の部分を司っていることをご存知でしょうか?
人が言葉を話すとき、脳の「ブローカ野(や)」という部位が活動します。
「ブローカ野」は、「運動性言語野」と呼ばれ、これまで「しゃべること」を担当していると考えられてきました。
ですが、最近になって、「体を動かすこと」全般に関わっている事が明らかになったのです。
つまり、「話すこと言葉」が変われば、「行動も変わる」のです!
経験を話す
ただ、だからと言って松岡修造さんのように「お前ならできる」「頑張れ!ファイト!」「最高だぜ!」といったプラス思考の言葉を叫ばなくなてはならないわけではありません。
やることは一つ。
「自分の経験」を語ることです。
『すぐやる!「行動力」を高める”科学的な”方法』という本では、「体の動きに関する言葉」を3つに分類しています。
1.主観的な言葉
2.客観的な言葉
3.経験的な言葉
例えば、自分が「熱っぽい」っと感じた時を例にとります。
この時、
「主観的な言葉」では「なんだか、だるい……」
「客観的な言葉」では「今自分は、寝込んでいる」
「経験的な言葉」では「風邪をひいているようだ」
といった具合です。
そしてこの3つの中でも特に重要なのが、「経験的な言葉」です。
人は「経験的な言葉」を発することで、現状を具体的に把握し、次の動作のシミュレーションをすることができます。
例えば、人生ではじめて熱を出し、風邪をひいた人がいたとします。
その人が、「なんだか鎧を着ているみたいに体が重いぞ」と、自分の状態を経験的な言葉にします。
すると、脳は「なら、その重い体をどうにか動かして、助けを呼ぼう」などと次の動作をスムーズに連想する事ができるのです。
サッカーの試合で、「なんだ今日はダメだな」「今日の俺は不調のようだ」といった主観的・客観的な言葉を使うよりも、「今日の俺は力んでいる。ならもっと肩の力を抜いてプレーしよう」など経験的な言葉に置き換えた方が、プレーが良くなるのと同じです。
現状をただ、主観的に、客観的に言葉にするのではなく、経験的な言葉にすることによって、人はすぐ次の行動に目を向けられるようになります。
目の前にある山積みの仕事に対し、「ああ、めんどくさい」「手を付ける気になれない」といった言葉を使うのではなく、「たくさんの仕事に手を付けるのは、まるで夏休みの宿題のようだ。ならまぁ、少しずつやれば、いつか終わるか」といったように考えるわけです。
目の前の現実を、自分の「経験的な言葉」で置き換えることで、その状況に合った行動をとることができるのです。
(参考文献)